株式会社刀によるジャングリアの交通対策に関するプレスリリースの問題点

Author: Yu Shioji (塩地 優)
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株式会社刀が2025年7月15日に公開した、ジャングリアに関するプレスリリース[1]において、本稿の筆者である塩地のコメントを指すと思われる形で、「大変遺憾に思う」という表現が用いられました。このプレスリリースにおけるコメントの解釈が、もとのコメントを曲解したものになっています。ここでは、株式会社刀による誤った解釈について、指摘します。

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株式会社刀のプレスリリース内容

プレスリリースは、「ジャングリア沖縄 2025年7月25日(金)開業まであと10日」というタイトルで公開されました[1]。その内容は、1段落でパークの開園準備が進んでいることを伝え、それ以外は交通対策について、6月25日のプレスリリースを繰り返すものでした。

その中に、

一部報道機関において、「ジャングリア側は自治体(名護市、今帰仁村)に任せっきりで(交通)対策をしていない」という誤った報道がされたことを受け、大変遺憾に思うとともに、弊社としての取り組みを改めてお伝えさせていただきます。

という表現があります。

これは、週刊新潮7月3日号に掲載され、オンライン版のデイリー新潮に7月6日に掲載された記事[2]を指すものと思われます。

新潮の記事の内容

週刊新潮およびデイリー新潮に掲載された記事[2]では、菅元首相の関与など、ジャングリアが公的事業的側面を持つことを指摘しつつ、

最大の難所は、幹線道路(県道84号線)からジャングリア入口に通じる最後の右折交差点だ。

としたうえで、塩地のコメントを紹介しています。コメントは、

「ジャングリアの開園時間(午前10時)に間に合わせようとして車が殺到することになれば、右折交差点の前で2~3キロの渋滞が発生するとみられます。ここは生活道路で住民も使っている道ですが、ジャングリア側は自治体(名護市、今帰仁村)に任せっきりで対策をしていません」

というものです。株式会社刀のプレスリリースにある「(交通)」という注釈を除き、一致する文面があることがわかります。

この議論は、県道に関するものですから、「自治体(名護市、今帰仁村)」という表記は誤りで、「自治体(沖縄県)」とされるべきです。市町村が行っているのは、市道・村道の樹木剪定などです。

株式会社刀のプレスリリースの問題点

新潮の記事の内容から明らかなように、塩地のコメントは、県道84号線とジャングリア前を通る道路との交差点についてです。この交差点、あるいはそのうち県道84号線側について、「ジャングリア側は自治体に任せっきり」という表現をしています。

これに対して、株式会社刀のプレスリリースでは、そうした県道84号線に関する話題であるという文脈を取り除き、また、「『(交通)』対策をしていない」という注釈を追加しています。これによって、あたかも、塩地が「ジャングリアは、全ての交通対策を自治体に任せっきりにしている」と発言した、と取れる表現に改変されています。

また、当該文章以降では、ジャングリア、あるいは事業者である株式会社ジャパンエンターテイメントが実施している様々な交通対策に触れていますが、県道84号線に関しては、一切触れられていません。こうした文脈も、上記の誤った理解への誘導を補強するものです。

これらは、元の記事の論旨を歪めるものであって、極めて悪質である、と考えます。特に、鍵括弧で括られ、原文に()がある中で、株式会社刀による注釈を()で追加する行為は、一般的な引用ルールに反するものです。元の記事が県道84号線の右折レーン整備に関するものであって、株式会社刀のプレスリリースは県道84号線の右折レーン整備を除く交通対策に関するものであることから、意図をもって論旨を歪める行為ですので、悪質な改ざんに該当すると考えます。

県道84号線右折レーンの整備が「自治体任せ」であることについて

県道84号線からの右折は、沖縄県が主体となって整備を行っています。県側がテーマパーク開業を把握したのは、開業1年8か月前の2023年11月。そこから用地の検討を開始し、整備までを行うため、右折帯設置が最善策だったと指摘されています[3]。

つまり、右折帯にするという計画自体から用地買収、右折帯工事の手配まで、県側が行っています。ジャングリア側が何か行ったとしても、パーク開園までに交通対策を実施してくれ、という要望のみであって、

  • 情報を一般に開示する以前から、県に道路整備を働きかける
  • 自ら用地買収を行い、県に譲渡する
  • 私道を整備する

など、自発的な対策は行われていません。これをもって、塩地は「自治体任せ」であると指摘しています。

したがって、この表現について「誤った報道」という表現がなされるいわれはなく、「大変遺憾に思う」必要もない表現だと考えています。

渋滞の予想について

塩地は、ジャングリアの敷地内駐車場、約1,100台のうち、8割が1時間の幅の中に集中することで、渋滞が発生するという試算を行っています[4]。

8割が1時間の幅の中に集中することの要因は、ジャングリアのアトラクションはキャパシティが少ないものが多く、数少ない体験枠を確保するためには朝一番で入園し、整理券を取得しなければならないことにあります。こうした情報が口コミで広がることによって、開園時間前に車が集中することになります。

株式会社刀のプレスリリースでは、

開業時を想定してお客様をお迎えした7月12日のテスト運営日においては、交通量増加は想定内で、大きな渋滞の発生はありませんでした。

としていますが、情報が少なく、かつ無料枠もあるために、必死で楽しもうとする方が多くないテスト運営日は、車が開園前に集中しなくて当然です。情報が十分にいきわたったお盆のころに、駐車場が満車になることがあれば、渋滞が発生するものと考えます。

参考文献

[1] PR Times 「ジャングリア沖縄 2025年7月25日(金)開業まであと10日」2025年7月15日閲覧
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000073819.html

株式会社刀「ジャングリア沖縄 2025年7月25日(金)開業まであと10日」2025年7月15日閲覧
https://katana-marketing.co.jp/img_sys/news/%E3%83%AA%E3%80%80%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%B2%96%E7%B8%84%E9%96%8B%E6%A5%AD%E3%81%BE%E3%81%A710%E6%97%A5%E3%80%81%E9%A0%86%E8%AA%BF%E3%81%AB%E6%BA%96%E5%82%99%E9%80%B2%E8%A1%8CFFF(%E9%80%A3%E7%B5%A1%E5%85%88%E3%81%AA%E3%81%97%EF%BC%89.pdf

[2] デイリー新潮「巨大テーマパーク「ジャングリア沖縄」の致命的な問題点… 「オープンとなれば住民の生活道路が激混みすることに」」2025年7月15日閲覧
https://www.dailyshincho.jp/article/2025/07061040/?all=1

[3] 沖縄タイムス「【挑む ジャングリア開業】渋滞回避、実現遠く 入口交差点の車両数試算 琉球大学准教授「ルートや入園時間の分散が鍵」」2025年7月15日閲覧
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1557800

[4] Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250015.
https://j-amusementpark.com/junglia-traffic-cross/

引用方法

引用時は、下記を明記してください。

Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250018.

利益相反

本稿に関わる利益相反はありません。

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