米国の遊園地で、未成年者要同伴の施設が増えているのはなぜか

Author: Yu Shioji (塩地 優)
※当サイト内の論文・解説等は、すべて著者個人がデータ収集、解析、考察を行ったもので、いかなる文言も当会を代表するものではありません。
Article type: Outreach (解説)

Article number: 260002

米国の遊園地で、未成年者要同伴の施設が増えています。これは、”Teen takeover(ティーンによる占拠)”と呼ばれる、多数の若者が施設に集まる事象と、それをきっかけとした暴力事件などが原因となっています。なぜ若者の集団が遊園地にやってきて、暴力事件へと発展するのか。その対処として、要同伴のルール化(Chaperone policy)が選択されるのはなぜなのか、考えていきます。

スポンサーリンク

Teen takeoverと暴力事件

TeenとTeen takeover

米国でいうTeen(ager)とは、13歳~19歳、日本でいう「中高生」に相当する言葉です。ただし、米国の多くの地域では、(飛び級等を無視すれば)14歳~18歳をHigh schoolで過ごすため、Teenの多くは、日本でいう「高校生」に属します。

このTeenが、様々な施設に集団で押し寄せる、Teen takeoverが社会問題化しつつあります。その多くはショッピングモール等、入場が無料の施設で起きていますが、遊園地のように有料の施設でも発生することがあります。

Teen takeoverは、SNS上で日時と場所を告知し、広くTeenに集合を呼びかけることで発生します。コロナ禍以前から発生していた現象ですが、コロナ禍後に急速に数が増えていて、その原因として

  • SNSの普及
  • 画像生成AIの普及によるチラシ作成難易度の低下
  • コロナ禍に人とのつながりが得られなかったことによる不安の解消

などが言われています。ただし、筆者は3点目のコロナ禍の影響については慎重な見方をすべきだと考えています。Teen takeoverが目立つようになったのがコロナ禍後のため、コロナ禍の影響があるという前提のもとに理屈付けされている可能性があって、コロナ禍から一定の年数が経過しなければ、相関があるかどうかという判断が付かないためです。

Teen takeover自体は単なる集会ではありますが、集会が認められていない私有地において、無許可で集会が行われるという点に問題があります。また、集会の目的が、若者が楽しむことにあるため、暴力事件が発生しなくても大きな騒ぎになりやすく、他の施設利用者にとって、不快な状況に発展しやすいことも大きな問題です。

Teen takeoverと暴力事件

Teen takoverは、SNS上で呼びかけられる集会のため、呼びかけ人の意図とは異なる人が集まる可能性を孕んでいます。例えば、呼びかけた人、あるいはその周囲の人を良く思っていない集団、互いのことをよく思っていない複数の集団、単に喧嘩っ早い人や喧嘩をしたくて参加する人などです。

こうした集団や人物が参加してしまうと、容易に暴力事件へと発展します。Teen takeover自体が暴力事件のきっかけになっているのです。

関わると何らかの問題に発展しそうな、血気盛んな若者に対して、一般に大人は関与しようとしません。多くの大人やファミリーの中に、血気盛んな若者が混ざっている状態であれば、暴力事件に発展する可能性は低いと言えます。一方で、同一の呼びかけに参加した者同士であれば、コミュニケーションが発生しやすい状態になります。そこに血気盛んな者が混ざれば、火が付きやすい状態になってしまいます。腕っぷしに自信のある若者にとって、Teen takeoverは格好のストレス解消の場となってしまいます。不特定多数に呼びかけを行うことで、暴力事件のタネを撒いてしまうことになっています。

遊園地においても、殴り合いが行われたり、駐車場において発砲事件が発生したり、といった事象があって、一部は動画で撮影され、SNS上で拡散されています。

遊園地の対応

遊園地は、安全な環境下で乗り物などを楽しむ場所です。ファミリーも多く訪れますから、健全でさわやかなイメージが重要です。Teen takeoverや暴力事件は、これとは真逆のイメージをもたらしてしまいますから、できるだけ排除したいと考えるのは当然です。

これに対応するために、多くの遊園地が導入しているのがChaperone policyです。未成年者には成人の同伴が必要、とするルールです。

対象: 15歳以下、17歳以下など

保護者: 21歳以上、子ども10人あたり1名以上など

時間帯: 終日または16時以降など

期間: 通年、ハロウィン期間のみなど

といったルールがSix Flags系を中心に、米国各地の遊園地で設けられています。

これによる効果ははっきりとしていませんが、一度Chaperone policyの期限が切れた後に再導入するパークがあったり、制限の対象を拡大するパークがあったりするため、少なくとも導入したパークの運営サイドは、一定の効果があると認識していると思われます。

ただし、Chaperone policyの導入は、遊園地にとっては機会損失にもつながります。若者だけで訪れるグループも重要な顧客ですから、その顧客を失うことになるためです。この機会損失を、少数の若者による暴力事件が発生し、イメージダウンにつながる確率と天秤にかけた結果、Chaperone policyを導入した方がメリットが大きいという判断によって導入されていると思われます。SNSの普及によって、暴力事件が発生した場合のイメージダウンが大きくなっていることも、Chaperon policyの導入を後押ししていると言えます。SNSの普及が暴力事件の発生確率を上げ、さらにイメージダウンの確率を上げていることになりますので、拡散の負の効果が乗算されてしまう、最も悪い側面が現れているように見えます。

この状況は、純粋に友だち同士で遊園地を楽しみたい若者にとっては悲劇です。15歳以下や17歳以下など、年齢によってひとくくりにされて成人の同伴が求められてしまうため、多数の罪のない若者からすれば、理不尽な状況です。これは、遊園地単独では解決が難しいため、近年議論が進んでいる未成年者のSNS利用に対する規制や、プラットフォーム側によるTeen takeoverへの対策など、問題に対する根本的なアプローチが必要不可欠です。

一般に、遊園地は入園料を徴収するため治安が悪くなりにくい、とされます。米国では所得と犯罪発生率の間に明確な相関があるため、有料かつ1日あたり5,000円-1万円程度のチケットが必要な遊園地には、犯罪発生率の高い層が入園しにくいためです。これに対して、若者は得られる金銭のうち、遊びに回すことができる金銭の割合が高いため、入園料が若者の暴力事件に対する抑止力になっていないと思われます。Chaperone policyを導入せざるを得なくなったことは、遊園地の事業環境の前提が崩れてきていることを示しているのではないでしょうか。

引用方法

引用時は、下記を明記してください。

Yu Shioji, J. Amusement Park (2026) 260002.

利益相反

本稿に関わる利益相反はありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました