2024年の遊園地ニュースまとめ

Author: Yu Shioji (塩地 優)
Article type:
News(ニュース)
Article number: 240031

2024年に発表された、遊園地のアトラクション新設や廃止等のニュースをまとめます。なお、ここに掲載している情報は、すべてニュースのデータベースに収集しているもので、1週間に1度、希望者へのメール配信も行っています。また、データベース自体も閲覧できるようになっていますので、ご自由に情報検索していただけます。

上記データベース登録ルールの関係で、すべてのニュースを網羅しているわけではありませんが、主だったところは蓄積されていますので、そのご紹介です。

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遊園地・テーマパークの開閉園

国内では、従来型のVRは落ち着いてきましたが、洗練されたタイプのVRやXRテーマパークは新規オープンが相次いでいます。宇宙旅行をイメージして、搭乗待ちからテーミングされたVR施設や、ミュージアム型のVR施設など、シミュレーションライド全盛期を思わせる状況。シミュレーションライドの時と同じ流れになるのであれば、これらは長続きはしないと考えられますが、シミュレーションライドよりもさらに投資額が小さいのもVRの魅力。回収期間も短く設定されているものと思われます。

海外では、イギリスの動向に要注目です。昨年までに、ユニバーサルスタジオ、Puy Du Fouが新パーク建設を発表していますが、新たにChessington Worldも、敷地内の再編ではありますが、新パークを発表しました。数年以内に、鉄道でつながるパリも含めて、テーマパークバンドが形成されます。

中東はサウジやUAEだけではなく、カタールも大規模なテーマパーク開発を発表しました。この地域も、かなり激しいテーマパーク開発が行われています。ただし、少なくともサウジはテーマパーク主体ではなく、観光開発の一部としてのテーマパーク。周辺はイスラム国家が多く、かなり商圏を広く構えないといけないため、こちらはすべてが生き残ることは厳しいと思われます。

アトラクション新設・リニューアル

国内の遊園地

2024年に発表された、完全新規アトラクションは17個、うち年内に開業したのが11個でした。数はそこそこありますが、大型ローラーコースターのような大物はなく、ほとんどが小型アトラクションです。今の日本の状況では、大物の追加は、当面厳しい状況が続くでしょう。全体の傾向としては、かねてから台数の出ているトライ・トレインが関西サイクルスポーツセンター関係で2機、最近また数を増やしているトップスインガータイプが1機、やはり数が出ているファミリードロップタワーが1機、といった形で、昨年までの傾向を引き継いでいるように見えます。また、今年開業したイマーシブフォートも開業後に新アトラクションを2つ導入しています。他に、比較的評判の良いルスツリゾートの新規お化け屋敷、新たな試みとしては、東京ドームシティのチャレンジ枠、XRアトラクションが見どころか。来年以降に予定される大型投資の発表も少なく、冬の時代は当面続きそうです。

リニューアルは、11個。こちらは戦慄迷宮や富士飛行社、スターツアーズなどの大物があります。

海外の遊園地

今年のハイライトは、なんといってもディズニーの、D23での多数のアトラクション発表です。ローラーコースター2つを含む、大規模投資が発表されました。特に、ウォルトディズニーワールドのマジックキングダムは、マークトウェイン号が通る河を削る大工事。カーズ2アトラクションと、別の場所にヴィランズ2アトラクションが追加されます。アニマルキングダムは、既知のディノランドエリア改装の詳報ですが、カリフォルニアアドベンチャーでも大規模改装、その他パークでもアトラクション新設が発表されています。

また、旧Six Flagsも大規模な投資を発表。その他、Cedar PointがVekomaのチルトコースター導入、Drayton Manorが出発するまでコースがわからないコースターの導入と、もはやコースターは「レールが途切れているのが当たり前」の時代に突入しつつあります。

RMCはハイブリッドコースターは落ち着きつつあって、シングルレール3機(うち2機は並走)を販売。フライングシアターは群雄割拠でレッドオーシャン化。ファミリーコースターは大型化だけでなく、前傾乗車やインバーテッドなど、多様な乗車形態も当たり前に。Break Dance5が2機導入され、Hussの回転ライドに復活の兆し。といったところが今年のトレンドです。

「イマーシブ」という表現は、やや落ち着きつつありますが、Puy Du Fouが5泊6日の高級鉄道旅行を発表しましたし、新規2パークを追加する予定もあり、「ホンモノの」イマーシブはまだまだ拡販傾向です。

アトラクションの廃止

今年も多くのアトラクション廃止が発表されました。特に思い入れのあるアトラクションの廃止は寂しいものですが、老朽化で復旧不可能だったり、コストがかかりすぎてパークの運営に影響をきたしてしまったり、はたまた安全面に問題があったりしては仕方ありません。元気のあるパークであれば、新しいアトラクションに置き換えられることもありますので、この先が楽しみになる、未来に向けた動きでもあります。

ハウステンボスの恐竜関係については、刀がコンサルを行っていることに伴い、パークイメージと違いすぎて雑多な印象を与えるアトラクションを撤去し、ファミリー向けアトラクションのエリアなどを開発するための用地確保ですので、少し特殊な要因です。

それ以外では、やはりトーゴ系の老朽化が目立ちます。よみうりランドに加えて、池の平ファミリーランドのローラーコースター、ボブスターも廃止。昨年には、西武園ゆうえんちとよみうりランドの観覧車廃止が判明していましたので、続々と引退していることになります。VR系では、東京ジョイポリス2機種、東京ドームシティ1機種の、計3機種が営業終了。地震や装飾物落下事故により、閉鎖となってしまったアトラクションもありました。

海外では、珍しいところでは、ほぼ個人管理だった木製コースターが、管理者の引退により売りに出される事態に。引き取り手が無ければ、営業終了してしまうという危機に瀕しています。特に米国は木製コースター文化が根付いているため、このように、ほぼ個人の趣味で営業しているコースターも存在します。米国であっても、個人事業の後継者問題は深刻なようです。

また、Universal Studios Floridaでは、大型コースターがわずか16年の営業で撤去されることが決まりました。これは、2大テーマパークであるディズニーとユニバーサルでは、最短記録です。従来の最短記録は、約18年弱の、Disney’s Animal KingdomのPrimeval Whirl(Reverchonのスピニングコースターのほぼ標準機ですが、対角配置が並ぶツイン機で、従業員の死亡事故や製造会社の倒産等もあって廃止)と、18年ちょっとのUniversal Studios Islands of AdventureのDragon Challenge(2つのインバーテッドコースターが絡み合う、レーシングタイプで、ハリーポッターエリア建設後、ハグリッドのコースターにスペースを空けるために廃止)でした。なお、2024年時点で、これらの2大テーマパークで撤去されたローラーコースターは、他に東京ディズニーランドのスペースマウンテンしかありません。Universal Studios Floridaで撤去されるHollywood Rip, Ride, Rockitは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハリウッド・ドリーム・ザ・ライドの成功を受けて、ミュージックセレクト機能を搭載して設置されたローラーコースターです。日本ではB&Mという大手ローラーコースターメーカーを用いたのとは対照的に、大手テーマパークでのローラーコースター設置経験が少ないMaurerというメーカーを使い、2両編成12人乗りという小型車両を高頻度で発車させるシステムでした。動く歩道を使って高頻度発車を実現し、垂直巻き上げや上下反転しない垂直ループなどがある意欲的なシステムでしたが、これが災いし、システムダウンが頻発。さらに振動が大きくて評判が悪い、高頻度発車を実現するためにコース途中に複数のブレーキポイントがあり、それぞれ停止寸前まで減速するためコースターとして楽しくないなど、様々な問題を抱えたコースターでした。Primeval Whirlは、古典的な、「枯れた」コースターをあえて導入した結果、評判が悪いという結果に終わりましたが、Hollywood Rip, Ride, Rockitは意欲的なシステムを導入して「攻めた」結果として評判が悪くなってしまったコースターです。短期間で消滅した3機種ともオーランドという、各ブランドの旗艦リゾートがあるエリアだということも踏まえますと、実験的なコースターを設置すること自体は責められることではありません。一方で、Hollywood Rip, Ride, Rockitに関しては、特にブロックブレーキでの減速が乗車感に与える影響や、高頻度発車システムを構築したことが無いメーカーに製造を依頼することの危険性は事前にわかっていたはずです。省スペースに2,000人/h級のインパクトあるコースターを作らなければならない、ということからの帰結として作られたコースターであるということは理解できるものの、やや杜撰さを感じる結果です。

事故・トラブル・訴訟

国内では、大きな事故は八木山ベニーランドのパイラット装飾物落下(けが人なし)、ルスツリゾートのスカイトレイル点検中に従業員が落下し骨折、の2件でした。怪我をされた方につきましては、回復をお祈りするばかりですが、これだけ事故が少ないというのは、やはり日本の遊園地の安全意識の高さを表していると思われます。その背景には、世界一厳しいと言われる日本の消費者の意識・風土もあると考えます。一方で、安全を優先するあまり、体験を損ねるような運用をしているパークが多いのも事実。安全と、良い体験を両立できるような考え方が浸透することを願ってやみません。

海外では死亡事故が発生していますが、コースターへの侵入者がいたり、安全管理の甘い移動遊園地において従業員が不用意にレール上に立ち入った事故だったりと、イレギュラーな案件です。マウンテンコースターに関しては、安全管理が今後問題になってくる可能性がありますが、これは安価版のコースターで、少し特殊かつ日本には導入される可能性が低いものです。海外、特に米国では一律な規制は難しく、かつ既存の遊園地が導入するようなものではないため、安価なものが好まれる可能性もあって、メーカー側の自浄作用が働くのかという点も先行きが危ぶまれます。

トラブルでは、米国で、比較的新しいコースターの長期停止が相次ぎました。1つは、KennywoodのSteel Curtain。2019年製のコースターですが、支柱の強度不足が判明し、新たな支柱を追加する工事と検証のため、2024年シーズンは営業を取りやめました。2023年7月からの長期停止です。また、Cedar PointのTop Thrill2は、開業後わずか6日で営業停止。結局年内は稼働しませんでした。前身のTop Thrill Dragstarが走行中にパーツ脱落し、パーツの1つが女性の頭部にあたり、重傷を負うという事故により2021年8月から営業を停止していました。ファンにとっては念願の再開だったため、ショックも大きい長期停止。営業再開直前には被害女性とも和解し、万全の状態でのリニューアルでしたが、うまくいきませんでした。もともとの油圧ロンチをLSMに変更し、3回の加速に分けることで最高速度193km/hを実現したものの、車両に異常が発生し、設計変更を行っているとの情報が流れています。

訴訟関係では、ドロップタワーの座席から乗客が落下し、死亡した事故に関して、メーカーに3億ドルという巨額の賠償を命じる判決が出されました。3億ドルというのは、懲罰的賠償を含むとしても、過去の判例と比較しても極めて大きな額。股を通すベルトを設置していなかったことが過失と認定され、かつメーカーが出廷しなかったことが原因だと推定されますが、それにしても大きな金額の判決が出ました。設置額(メーカーの売上)は数十分の一に満たない額と推定されますので、確定判決となればメーカーの経営に甚大な影響を及ぼす額です。控訴すれば減額されることは、ほぼ間違いありませんが、メーカーに訴訟継続するための体力があるのかどうか、といったところも含めて、今後の動向が注目されます。

結言

今年は、大物の閉鎖・閉園は少なく、新設も少ない、盛り上がりに欠ける1年でした。来年は、特に海外に目を向けると、ユニバーサルの新パーク、Epic Universeの開業や、多数のローラーコースター新設もあって、遊園地・テーマパーク業界はアツい1年になると予想されます。ディズニーも来年以降、多数の新規アトラクションが控えていますし、サウジアラビアの超ド級遊園地も開業します。国内にもこうした活気を取り戻したいところですが、すべては2025年開業のJUNGLIAと、その先、2031年に開業を予定するKAMISEYA PARKの動向次第か。

事故等の面では、やはりオペレーションの効率と、安全性の両立というのが日本の遊園地の課題だと思われます。来園者数が頭打ちになる中、長い待ち時間をスキップするチケットの販売が客単価増に寄与している側面もあって、オペレーションの効率化に目が向きにくい現状があります。パーク資産の効率的な活用、持続的な成長のためには、実際には入園者数を増加させ、入園(またはアトラクション)チケット収入を増やすことが、結果的には近道となります。イマーシブフォート東京やJUNGLIAが開業し、大手テーマパークの集客ノウハウが徐々に詳らかになる中で、そうした戦略をうまく地域特性にあわせて落とし込み、入園者数を増大させ、さらにそれを捌くために安全で効率的なオペレーションを行い、満足度向上に寄与する、という正のスパイラルに入ることを期待してやみません。

なお、ニュースのデータベースには、上記で紹介した以外にも各社の決算情報や、新ライドシステムの情報など、様々なニュースを登録しています。是非、あわせてご覧ください。

引用方法

引用時は、下記を明記してください。

Yu Shioji, J. Amusement Park (2024) 240031.

利益相反

本稿に関わる利益相反はありません。

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