Author: Yu Shioji (塩地 優)
Article type: Outreach(解説)
Article number: 250007
2025年7月、沖縄に新たなテーマパーク「ジャングリア沖縄」がオープンする。P&Gで培った、数学的なマーケティングのスキルを活用して、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを経営危機から救い、V字回復。万年赤字だったグリーンピア三木をネスタリゾート神戸に転換して黒字化、西武園ゆうえんちのリニューアルを行って集客増、お台場にイマーシブ・フォート東京を開業など、テーマパークに関わる様々な実績で知られる森岡毅氏が率いる株式会社刀。その刀が、長年温めていた沖縄テーマパーク事業を、ついに具現化する。実績を見ると、失敗の要素が無い事業のようにも思えるが、本当なのだろうか。落とし穴はないのか、地元の懸念なども踏まえてみていこう。
第2回は、成否の基準を考えた。第3回の今回は、成否を分ける1つの要素となる、ジャングリア沖縄の集客に対する懸念点をあげる。
この解説は、一般誌寄稿用原稿に、大幅に加筆修正したものです。文体が通常と異なること、正確性よりわかりやすさを重視していることをご了承ください。

他施設との違いは、やんばるの植生
集客数に与える影響を考えるため、まずはジャングリア沖縄にできるアトラクションを確認しておこう。
目玉は、恐竜にオープンタイプのSUVが追いかけられるアトラクションである。これに付随して、歩いて回るファミリー層向けの恐竜アトラクションがある。他に、詳細は不明だが、ヤンバルクイナなどのキャラクターと対話できるアトラクションも作られる予定だ。
アクティビティ系は、ネスタリゾート神戸でも実績のあるバギー、ジップライン、ひもなしバンジーに加えて、特殊なバンジー、隙間の大きな吊り橋渡り、人間パチンコ、気球がある。
この他、景色の良いレストランや、インフィニティ風呂を特徴とするスパ、ショップなどがオープンする。
他では体験できないアトラクションは多くないが、やんばる特有の植生と、その景色によって体験を特徴づける方針だ。
沖縄の観光客に限ると、ターゲット層は狭い
では、改めて集客を考えていこう。目標は、#2で述べた通り、最低100万人、開業当初は175万人に設定する。
テーマパークの集客は、どのような要因に左右されるのだろうか。ジャングリア沖縄は、沖縄を訪れる人の中から集客する、と言っている[1]。このため、集客数は、(沖縄を訪れる人の数)×(そのうちテーマパークを訪れたいと思う人の割合)となる。
まず、1つ目の課題は、「そのうちテーマパークを訪れたいと思う人の割合」という文言の中の、「そのうち」の部分だ。沖縄を訪れる人のうち、テーマパークを訪れたいと思う人の割合は、日本在住者(あるいは東アジア圏在住者)のうち、テーマパークを訪れたいと思う人の割合と同じではない。沖縄を訪れたい、と思う時点で、在住者全体の平均値とは、異なる好みを持つ。
沖縄を訪れる人の過ごし方(複数回答)を見ると[2]、アクティビティ系に相当する「海水浴・マリンレジャー」は30%に満たない。「ショッピング」と同程度で、「休養・保養」よりも少ない。「観光地めぐり」は約60%に達することから、アクティビティ需要ではなく、観光地めぐり需要を取り込まなければ、ニーズが大きく減少してしまうことがわかる。
沖縄を訪れる人は、既に約9割がリピーターだ。リピートを重ねるにつれて、観光地巡りをする人の数が減り、「休養・保養」の割合が増える。年齢層も、50代、40代、30代、20代の順となっている。40代以上で、約6割を占める。同行者についても、「一人」、「夫婦」、「恋人」で約6割だ。ここから見えてくるのは、沖縄を訪れる人のうち、かなりの部分が一人、あるいはパートナーとゆっくり過ごしたい、というイメージだ。
「パワーバカンス」というジャングリア沖縄のマーケティングコンセプトと、アクティビティや恐竜系のアトラクションに合致しそうな層は、10代、20代の若者、あるいは30代、40代のファミリー層だ。刀は中年や高齢層がゆったり過ごせるイメージも訴求する、と言っているが、ゆったり過ごしたい層は、比較的低単価のスパに立ち寄ることはあっても、アクティビティを中心としたテーマパークに立ち寄るとは考えにくい。食事を楽しもうにも、別途入場料を徴収されるのであれば、他の施設を選ぶだろう。バカンスと言っても、リゾートホテルのようにゆったりくつろげるチェアがあるわけでもなければ、高級ホテルのような個人に合わせた接客が行われるわけでもない。そのような施設に、ゆったりと過ごしたい人たちはどの程度、訪れるのだろうか。10代~40代は、沖縄入域観光客のうち、63%。友達同士またはファミリー層に該当するのは、約30%だけだ。
沖縄を訪れる人のうち、ターゲットになりそうな層が少ないことがわかる。前記の参考文献では、複合的な比率がわからないため、推測でしかないが、ターゲットになりそうな層は、多く見積もっても50%に満たないのではないだろうか。沖縄入域者1,000万人のうち、50%、つまり500万人に満たない数の中から、100万人以上を集客しなければならない。これだけでも、苦難の道であることがわかる。
実は、美ら海水族館は沖縄の客層と非常にマッチしている。水族館は、アクティビティを中心としたテーマパークとは違って、「ゆっくり過ごす」というイメージとの結びつきが強い。また、沖縄の「海」というイメージとも合致するため、集客しやすい施設だ。これと比べると、ジャングリア沖縄は、沖縄での過ごし方のイメージと乖離がある。近隣の人気施設と方向性が異なることも、集客を難しくする。近くまで来た消費者が求めているものと異なるため、立ち寄ってもらうことが難しくなるのだ。
無償の広告で、どれだけ人を集められるか
テーマパークを訪れるきっかけには、3種類ある。細かく見ていけば、もっと多くの経路があるが、大きくは3種類に大別される。
- テーマパークからの直接的な訴求を受けて
- 前回の訪問が楽しかったから
- 第三者の口コミを受けて
このうち、テーマパークからの直接的な訴求は、刀が得意とするところだ。
100万人規模のテーマパークの場合、全国的なTV広告や大規模なネット広告に割ける予算は無い可能性が高い。地方遊園地であれば、ローカルCMを活用する手もあるが、ジャングリアの集客対象は全国に散っている。広告のターゲティングが難しく、費用対効果が悪くなりやすい。
そこで、カギになってくるのは、お金を払わずに宣伝してくれる、TV番組や雑誌記事、Youtuberなどのインフルエンサーだ。インフルエンサーは招待する必要はあるかもしれないが、いずれにしても少額の支出で、大きく露出を増やすことができる。ジャングリアも、開園当初は、お出かけ系TV番組を網羅し、様々なニュース番組でも取り上げられることで、大きな話題となるだろう。
これらの話題を目にし、耳にした人が、実際にジャングリアを訪れたくなるような魅力を提供できるか、が1つ目の関門となる。イマーシブ・フォート東京は、ここで躓いた[3]。「何ができる施設なのか」がうまく伝わらなかったのだ。ジャングリア沖縄は、この点は安心だ。「何ができるか」は、非常に分かりやすい。問題は、わざわざ沖縄で、しかも名護方面まで向かうだけの「面白さ」が伝わるかどうかだ。
大手テーマパークであれば、イメージ戦略だけで十分戦える。森岡氏も著書で指摘していたが[4]、消費者は1万円近いチケット料金を払って、「つまらなかった」という感想に至るのは避けたい。大手であれば、一定の楽しさは保証されている、そのイメージが出来上がっているので、あとはどうアップデートされたか、というイメージを伝えれば良い。
一方で、小規模なテーマパークは、「どんな体験があるのか」を消費者がきちんと調べる。価格に見合った体験ができるかどうかを考えるためだ。しかも、沖縄という立地。消費者が広報に触れてから、実際に行動に移すまでに、数か月のタイムラグが発生する。本能に突き刺したとしても、森岡氏が言う「システム2」[4]が起動し、脳内のロジカルな回路が、価格に見合った体験ができるかどうかをしっかりと判断する。
オープンスタイルのSUVに乗って、実際に動く恐竜に追いかけられる体験は、魅力的に映るだろう。ただし、それ以外のジップラインや気球、バギーなどは、ジャングリア以外の施設でも十分に楽しめるものだ。やんばるの植生で特徴を打ち出しているとはいえ、沖縄で「絶景」と言えば、海を思い浮かべる方が多いだろう。実際、海の上を飛ぶジップラインは、既に沖縄にある[5]。魅力的に映るアトラクションが1つだけでは、7,000円を払えるという判断をする人はごく少数だろう。
一部には、広告のイメージだけで訪れる人もいる。ただし、こうした人にとっては満足度が重要になる。この点は、次の項で詳述することにする。
集客のカギは、顧客の満足度
2つ目の関門は、その先にある。100万人規模しかない場合、扱いはやはりローカル遊園地に近い。アトラクションの追加やリニューアル程度では、当初ほどの注目を集めることはできない。実は、100万人規模から露出を増やして、奇跡の復活を遂げた遊園地もあるが、ことはそれほど単純ではない。その施設(よみうりランド)は、群雄割拠の遊園地として戦うのではなく、イルミネーションというジャンルで、全国トップクラスのものを作り上げた。大きな市場で戦うのではなく、投資余力と施設面積から適切な規模のジャンルにターゲットを移して、そのジャンルでトップクラスに躍り出たのだ。これによって、無償メディアの露出が増え、集客を大きく伸ばしていった。さらに、そこで得た利益でアトラクションを新設するなどして、遊園地としての魅力を向上させせることで、正のスパイラルを実現したのだ。
これに対して、ジャングリア沖縄は、端からトップとして戦かうことができない、テーマパークというジャンルで攻める。そうすると、リニューアルをしたとしても、話題には上がりにくい。多くのメディアは、カテゴリトップのディズニーやUSJの話題を取り扱うためである。
こうしたテーマパークでは、リピーターと、既に体験した人の口コミを頼りにするしかない。このいずれも、顧客の満足度が極めて重要だ。それも、単に「面白かった」程度のものではなく、熱量をもって「感動した!!」と言わせるレベルでなくてはならない。ローカル遊園地であれば、「面白かったよ」で十分な場合もあるが、沖縄で、那覇空港からレンタカーで2時間以上かかる立地だ。しかも、客単価は1万円を超える。近くには、2,000円ちょっとで感動が約束された施設がある。感動するレベルでなければリピートはしないし、熱量のある口コミでなければ人は動かない。
刀は、世界トップのイマーシブシアターを作らなかった
刀が作るエンターテイメントのレベル感を知るには、イマーシブ・フォート東京の事例を見るのが良い。この施設では、イマーシブシアターと呼ばれるタイプの演劇が中心になっている。
イマーシブシアターの金字塔と言えば、最近までニューヨークで公演されていて、現在は上海で、年内には韓国にも常設劇場がオープンする、”Sleep No More”という演目だ。ストーリー自体は、シェイクスピアの「マクベス」の現代的な解釈がベースで、これにいくつかの作品がマッシュアップされている(マッシュアップされる作品は、公演場所によって異なる)。この時点で、オペラなどの現代解釈の影響を強く受けた、芸術性の高い作品だということがわかる。会話はほとんどなく、ストーリーは言葉なしで進んでいく。その世界観の中を、観客は自由に歩き回りながら、好きな演者を見たり、時にはセットを眺めて回ったりすることができる。
演者は、ほぼ全員が超人的な身体能力を持ち、あらゆる場所で激しいコンテンポラリーダンスを踊る。その絶技を、肌と肌とが触れ合うほど、息遣いを感じられるほどの至近距離で見ることができる。時には明滅するフラッシュの下でダンスをしたり、時には目の前で人が忽然と消える、不思議な現象に出会ったり。セットや演出にも尋常じゃないこだわりがあり、そこら辺に散らばっている紙の1枚1枚にも、ストーリーと関係した文章がちりばめられている。作り手の狂気的なこだわりと、演者、演出、セットなどあらゆるものの尋常ではないクオリティ、そして謎めいたストーリーによって、熱狂的なファンが多く、かつ新規客も多く獲得している。
難解すぎる、複雑に絡み合ったストーリーと、現代的な表現、さらには言葉が無いこともあって、当然ながら「何だかよくわからなかった」という意見も散見される。それでも、「何か凄いことが行われている」ということは伝わる演目になっている。
では、イマーシブ・フォート東京の演目はどうだろう。観客が自由に歩き回れるという点で、また、演出的に明らかに意識している部分があるという点で、「ザ・シャーロック」が類似演目だ。ストーリーは、シャーロックホームズにまつわるオリジナルで、イマーシブシアター用にストーリーが絡み合うようにしてあるとはいえ、普通の演劇に近いものだ。アクションに乏しく、ストーリーは会話劇で進んでいく。観客の体感としては、演者の近くに寄っても、ただ「声が大きく聞こえる」だけだ。モニターを使った演出や、ちょっとしたトリックはあるが、そのトリックも古典的なもので、驚きはない。
「全く見られたものではない」というほどではないが、「すさまじいものを見せられた」というほどでもない。演劇として、決して悪い出来ではないが、イマーシブシアター要素は代表的なものをなぞっただけだ。試験であれば、「優」を取りに行くのではなく、良くて「良」、あるいはギリギリ「可」を狙いに行くような演目の組み立てだ。
刀のクリエイター陣は、特にアトモスフィア型のイマーシブシアター製作には定評がある。西武園ゆうえんちの、夕日の丘商店街や、イマーシブ・フォート東京のフォルテヴィータ事件簿がそれだ。ここでの質を見るに、”Sleep No More”, あるいはその製作者であるPunchdrunkをきちんとベンチマークして、良い部分を真似すれば、近いレベルの演目を生み出す余地はあるように思う。しかしながら、刀はそれを選択しなかった。予算や納期、あるいは初見の方のわかりやすさなど、様々なものを勘案した結果だろう。結果として、「良狙い」の演目を生み出した。
西武園ゆうえんちの「ゴジラ・ザ・ライド」も、100点を取りに行くアトラクションではない。国内のフライングシアターでは、いや、世界的に見ても、トップクラスの出来だ。ただし、あくまで「フライングシアターとしては」という前置きが付く。確かに、ユニバーサル・スタジオの4Dシアターに近い出来にはなっている。フライングシアターである分、また、映像が素晴らしい分、ユニバーサル・スタジオ系の4Dシアターは上回っているだろう。しかし、ユニバーサル・スタジオでは、4Dシアターは決して最も人気のあるアトラクションではない。テーマパークにおいては、100点を取りに行くアトラクションというのは、アメイジング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライドであって、ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニーである。あるいは、米国ディズニー系列にあるRise of the Resistanceである(気になる方は、是非動画を調べてみて頂きたい)。スクリーンと向かい合ったまま、揺れと映像だけを楽しむシミュレーションシアタータイプのアトラクションは、予算やスペース、運営効率の観点から妥協点として生み出されるものだ。大型パーク内にあれば、パークの魅力を引き上げるアトラクションになるが、単体でメインを張るには弱いのだ。
こうして考えると、また、刀がジャングリアについて、低予算だと強調していることを考えると(実際はそれほど低予算ではないのだが)、ジャングリア沖縄に設置されるアトラクションは、メインアトラクションであっても、様々な妥協の上に作られる可能性が高い。そうなると、この立地で成功するために必要な、熱量を持った感動を巻き起こすことはできないだろう。「うん、面白いね」では戦えない。
待ち時間の長さと、列の進みの悪さが満足度低下に拍車をかける
加えて、満足度に重要な影響及ぼすのが、待ち時間だ。実は、ジャングリア沖縄には、整理券を取得せずに常時体験できるアトラクションは、トゥクトゥク風の移動手段(タムタムトラムという名前だと予想)などを除けば、4つしかない[6]。ジャングリア沖縄側が、最大入場者数として想定する、日あたり1万人の場合、整理券を取得しなければ体験できないアトラクションは、入場者の5%未満しか体験できないと予想される。95%の人たちは、残りの4つのアトラクションしか体験できない。
その95%が殺到するアトラクションのキャパシティは、1時間当たり1,000人程度と予想している[6]。9,500人が、1時間に1,000人しか乗れないアトラクションを目指すのだ。開園早々に3,4時間待ちとなり、体験を諦める人が続出するだろう。これは、キャパシティ設計をアトラクションのキャパシティをベースとするのではなく、パーク内の群衆混雑をベースとしているために起きることだと思われる。要するに、「広いわりにアトラクションが少ない・アトラクションのキャパが少ない」ために、計算がズレてしまうのだ。
また、大規模テーマパークと比べると、列の進みが悪い。大規模テーマパークは、2,000人/hといった大人数を捌くアトラクションを多数有しているが、ジャングリア沖縄は最大でも300人/h程度と予想される。行列の長さの割には、ゆっくりと進む。この進みの悪さは、待っている人にいら立ちをもたらす。「オペレーションが悪いのではないか」といった不満につながりやすい。
こうして、特に混雑時には、「混んでいてほとんど何も体験できなかった」、「並んでも列が全然進まない」といった不満へとつながっていくことが予想される。
実際に、先日まで刀が運営に携わっていた、ネスタリゾート神戸の口コミには、そうした評価が並ぶ。気になる方は、Googleで検索して、レビューを見て頂きたい。点数の低いレビューが多く、その原因は、待ち時間の長さやオペレーションの悪さに起因する。このいら立ちは、「可」を取りに行ったアトラクションを「不可」に変える。
後から満足度を上げても、効果は薄い
満足度が低いと、刀はあらゆる方策を使って満足度を高める工夫をする。そのスピード感はすさまじく、同時進行で打てるあらゆる手を打ってくる。これによって、不満は徐々に改善されていくだろう。
しかし、後から対策をしても、効果は薄い。前にも述べたように、最大の露出が得られるのは開業直後だ。そこから時間が経つにつれて、露出も集客も落ち込んでいく。開業直後に圧倒的な満足度を提供できなければ、集客が落ち込んだ後に感動を呼んでも、体験人数が少ないため、その分だけ拡散効果が弱まる。カルト的な人気を博すだけになってしまう可能性が高い。
実際、イマーシブ・フォート東京はそのような流れを辿った[3]。当初は満足度が低かったため、新アトラクション導入や、短期でのリニューアルなど、あらゆる手を打った。結果として、満足度は高まったと思われるが、集客の改善には結びつかなかった[3]。固定ファンは獲得したものの、新規客の開拓ができなくなっていたのだ。ジャングリア沖縄も、開業時に高い満足度を狙わないと、厳しい戦いを強いられることになるだろう。
にもかかわらず、ジャングリア沖縄は、アトラクション開発も納期との戦いをしているようだ。アトラクションリストに掲載されていた、「トレジャーバトル」は、2月末ごろに公式サイトから削除された。このアトラクションは、ネスタリゾート神戸に設置された、サバイバルゲームタイプのアトラクションの進化版だと考えられる。何らかの発注が開業に間に合わないか、あるいはトラブルが発生したのだろう。納期とのギリギリの戦いの結果、アトラクション数が減る結果になっている。開業までに、最高の満足度を提供する万端の準備が整うとは思えない状況だ。
何人集客できるか
ここから先は、筆者の想像で語るので、話半分で読んで頂きたい。
集客数を予想してみよう。沖縄旅行者のうち、ターゲットになり得るのは400万人程度だと予想する。各種メディアでリーチできるのが、そのうちの70%、280万人としよう。イメージ戦略だけでは、行き先選定にあたって80%は脱落する。初年度の集客は、残りの20%、60万人程度になるのではないか(スパは除いて考えている)。スパを含めた延べ人数でも、80万人には満たないだろう。
翌年度以降は、そこから急減衰する。良い口コミが急速に広がらないことを、人々はネガティブにとらえる。3~5年で集客は半減し、年間30万人程度に落ち込む。そこがベースラインとなって、30万人程度を維持し続けるようになるだろう。ただし、この人数では施設は維持できない。最短で4年目、追加の資金調達などで持たせても、7年以内には経営が行き詰ってしまう。
開業前に大幅な満足度向上策がとられることを期待したい。
参考文献
[1] 沖縄タイムス「7月開業のジャングリア沖縄 入場料6930円の狙いと収益性 その戦略とは?【インタビューでより詳しく】」 2025年3月2日閲覧
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1516362
[2] 沖縄県「令和4年版観光要覧」2025年3月2日閲覧
https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/026/887/2_1-5r4kankouyouran.pdf
[3] Yu Shioji, J. Amusement Park (2024) 240021.
https://j-amusementpark.com/immersive-fort-sc/
[4] 「確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか」森岡毅、今西聖貴 (2025)
[5] PANZA沖縄 2025年3月2日閲覧
https://panza.co.jp/okinawa/
[6] Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250004.
https://j-amusementpark.com/junglia-bep/
引用方法
引用時は、下記を明記してください。
Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250007.
利益相反
本稿に関わる利益相反はありません。
コメント
加えて県外客が増加する夏場には沖縄独特の日差しの強さやスコールの様な雨があります。屋外型の施設では辛い体験になりますので、リピーター増に繋がるかは不明です。あと交通渋滞を含めアクセスの悪さは致命的かも知れません。
谷口様
コメントをありがとうございます。
天候要因については、特に台風は、集客のムラを考える際に考慮しております。
https://j-amusementpark.com/junglia-bep/
そもそも、天候の影響が大きいテーマパークで、日時指定式のチケットだと、チケットを事前に買おうと思わないですよね。特に夏場は。
「パワーバカンス」という割に、休憩できる場所もあまり用意していないように見えますので(1万人も入れるのに、対応する休憩場所を用意すると大変なことになります)、ショッピング以外はほぼすべてを炎天下or雨の中で過ごすことになります。つらいですね。
交通渋滞については、#5で別途詳述する予定です。
大迷惑 大渋滞 沖縄県最悪
大渋滞 沖縄からしたら 大迷惑
コメントありがとうございます。
渋滞が発生すれば、地元の方にはかなりの悪影響がありますよね。今のところ、渋滞を起こさないための対策をしているわけではなさそうですので、円滑な交通を実現できるような対策を期待したいところです。
沖縄は自然を楽しむところだけど、無計画にいったら何も出来ずに終わる。とりあえず沖縄の自然を満喫出来るテーマパークがあれば一回は寄りたい。
だが、これを目当てに沖縄に行くのはコスパ悪すぎて無理
コメントをありがとうございます。
そうですね、自然を満喫できれば良いのですが、ここは基本的には遠くから眺める設計なんですよね。それを、多くの方がどう判断されるのかどうか。
ここを目的に沖縄に行きたいと思う人を集客しようという狙いではない、というのは既に明言されていますので、既存のお客さんのなかから、どれだけ集客できるかですね。