Author: Yu Shioji (塩地 優)
※当サイト内の論文・解説等は、すべて著者個人がデータ収集、解析、考察を行ったもので、いかなる文言も当会を代表するものではありません。
Article type: Article (研究)
Article number: 250021
遊園地に「何人入れて良いか」というのは、その遊園地が有するアトラクションやショー、レストランなどの飲食施設、ショップ、駐車場などのアクセス手段、園内の道幅、ベンチ等々の複合的な要因によって決まります。さらに、「何人入れて良いか」には、同時に何人入れて良いか、1日に何人入れて良いかなど、様々な観点があります。ここでは、東京ディズニーランド(TDL)を題材にしながら、主に園内施設に起因する遊園地のキャパシティの求め方を考えていくことにします。
同時滞在可能人数の考え方
同時滞在可能な人数には、2通りの考え方があります。
1つは、パーク内にどれだけ詰め込んで良いか、というある種の限界キャパシティです。これは、あくまで群衆雪崩等が発生しない限界値であって、通常のパークでは、花火大会等の大規模かつ人が動かないイベントを除いて、そのようなレベルにまで人を入れることはあり得ません。この限界キャパシティは、単純に、パーク内の人が立ち入れる場所の面積で決まります。アトラクション等を動かしていなければこれだけで、動かす場合にはアトラクション自身のキャパシティと、その周辺の人流を確保するためのスペースを用意する、という形で計算していく必要があります。ただし、上述の通り、ここまで人を入れることは、通常の運営では考慮する必要がありませんので、ここでは詳細の計算は行いません。
もう1つの同時滞在可能数の考え方は、入園者全員が目的をもって行動できる限界数です。ここでいう目的というのは、「休憩する」なども含みます。簡単に言えば、「できることが無くて途方に暮れている」ような人が発生しない、限界の数です。「アトラクションが、どれも混んでいるから休憩するか」という消極的休憩ができるだけ発生しないように、調整をしたうえで計算していきます。
これを計算するためには、まずは各施設のキャパシティを計算していく必要があります。
施設ごとのキャパシティ
各施設のキャパシティは、1時間に処理できる人数と、ある特定のタイミングで収容できる人数の2通りを考える必要があります。
ライドアトラクション
1時間に処理できる人数の理論値は、アトラクションをフルに運用した時の値で、様々な方法で計算することができます。例えば、ホーンテッドマンションは3秒弱に1台、3人乗りのライドが来ます。単純計算すると、約3,600人/hとなります。あるいは、ローラーコースターであれば、巻き上げやブレーキで区切られた区間を通過するのにかかる時間のうち、最も長い個所が、出発間隔の最短時間となります。
ホーンテッドマンションの効率には、もう少し大きい値も知られていますが、ここではやや保守的な値を用います。これより大きい値は、「オムニムーバー」と呼ばれる同型ライドを、より高い速度で運用したパターン、例えばバズライトイヤーのアストロブラスターなどが該当すると考えます。
このようにして計算した理論効率のうち、実際の運用において、どの程度の効率で運用されているかどうかを計算します。例えば、シアター系アトラクションで、2シアターあるのに1シアターしか運用されていないとか、3編成を同時運行できるにもかかわらず、2編成しか運行していないとか、そういった事情を勘案して、実際の運用の理論効率を求めます。
さらに、現実には、乗降車に想定より時間がかかって、理論通りのタイミングで出発させられなかったり、グループの人数のバラツキによって、乗車定員を埋めることができなかったり、といったことが発生します。これらを勘案するために、アトラクションごとに一定の割合を乗じます。例えば、先述のホーンテッドマンションは、ほとんどのライドに2名以下で乗車します。また、乗降に手伝いが必要な方や、ムービングベルト上でのイレギュラーの発生などによって、減速運転されたり、停止したりする場合があります。これらを勘案すると、理論効率に0.6程度の係数を乗じるのが適切でしょう。このような係数を、アトラクションごとに決定するか、推計していきます。こうして得られた実運用効率が、各アトラクションが1時間に処理できる人数になります。
一方で、ある瞬間に、あるアトラクションがどれくらいの人数を収容しているか、というのは、別途考える必要があります。最大の同時滞在可能数を求めたいので、繁忙期の、最も人が多い時間帯で考えましょう。そうした時に、「並ぶのをあきらめる」人が多く発生し始める待ち時間を考えます。例えば、ホリデーバージョンではないホーンテッドマンションであれば、45分~60分程度が1つの目安になるでしょう。ここでは保守的に、45分という数字を使います。実運用効率2,160人/hに対して、45分の待ち時間が発生すると、待ち列には1,620人がいることになります。この45分の待ち時間には、プレショーの時間が含まれている節がありますが、ここではあくまで例示ですので、そのまま計算してしまいます。
体験時間は、プレショーを含めて約15分です。ですから、2,160人の1/4、540人が体験していることになります。これらを合わせて、アトラクションに拘束されている人数は、1,620 + 540 = 2,160人となります。
一点注意しなければならないのは、出発間隔による待ち列のムラです。例えば、ショーが10分おきにスタートする場合、待ち列表記が20分待ちだと、2回後のショーに案内されることを意味します。列に並ぶ人の中には、待ち時間が10分ちょっとの人もいれば、20分きっかり待つ人もいるわけです。このため、平均的な列の長さは20分相当ではなく、一定間隔で人がやってくるという前提を置くと、15分相当になります。これを勘案するために、待ち列人数から出発間隔の半分を引く必要があります。
また、プライオリティパスやプレミアアクセスなどのラインスキップパスがある場合、その分を待ち列から引く必要があります。ラインスキップパスを運用する多くの施設の場合、ラインスキップ比率が5割前後になりますので、それを乗じる必要があります。
まとめます。アトラクション形式の施設のキャパシティは、
( 実運用効率 ) = ( ( 定員 ) / ( 運行間隔 ) ) × ( 実運用係数 ) × ( 実効率係数 )
( 待ち列人数 ) = ( 実運用効率 ) × ( 待ち時間 ) × ( ラインスキップ比率 ) – ( プレショーまたは乗車定員 ) / 2
( 体験中人数 ) = ( 実運用効率 ) × ( 拘束時間 )
で求まりまして、各アトラクションの収容人数は(待ち列人数)+(体験中人数)となります。
なお、TDLに関するこれらの数値をまとめたCSVを、本稿末尾からダウンロード頂けます。体験時間等は、TDLの公式ページ[1]を、それ以外の数値は筆者が実測するなどの方法で導いたものを記載しています。あくまで目安であって、正確なデータではない、という点はご承知おきください。
ショーアトラクション
シアタータイプのアトラクションは、「ライドアトラクション」に含めてしまいまして、ここでショーと呼ぶのはライブショー形式のエンターテイメントです。
これに関しては、1時間当たりのキャパシティという概念がありません。1日に体験できる人数は、
(ショー定員) × (公演回数)
でシンプルに求まります。
ある時点での収容人数もシンプルで、ショー開催時間中はショー定員で、ショー開催時間以外は0です。
アトモスフィアタイプや、路上で行われるタイプは計算が少し難しいですが、ショー定員を既定のエリアと人の密度を仮定することで、ザックリと試算できます。
キャラクターグリーティング
キャラクターグリーティングは、施設型のものは、計算方法がライドアトラクションと同じ、路上タイプのものはアトモスフィアショーと同じ計算をすることになります。
飲食施設
飲食施設の1時間当たりのキャパシティは、回転率から求めていくことになります。例えば、ファストフードに近い形態の軽めの飲食移設であれば、30分程度で1回転します。つまり、1時間に2回転です。あるいは、フルサービスでコース形式の料理を提供する場合は、90分~120分で1回転します。施設ごとに、
(客席数) × (回転率)×(空席率)
で1時間当たりのキャパシティが求まります。空席率は、例えば4人掛けの席に3人で座るなどによって発生する空席を考慮するためのものです。繁忙時間帯には席の融通が行われることもあるため、0.9程度を勘案すれば十分だと考えられます。また、昼は11時~14時、夜は17時~20時頃が繁忙時間帯で、飲食施設に十分なキャパシティがあれば、それ以外の時間帯は空席ができる場合が多くなります。1日のキャパシティを計算する際に、この点は注意が必要です。
特定の時間における収容数は、基本的には客席数で決まりますが、カウンター形式の場合や、カフェテリア形式の場合は、列に並んでいる人等をカウントする必要があります。例えば、2分に2組、1組平均2人の構成で、会計完了・飲食物提供まで30分の場合、30人を列に収容することになります。ただし、こうした場合でも列に並んでいる場合に席取りが行われることも多く、席取りと飲食物購入が分離されていない場合が多いため、結局のところ収容数は客席数をカウントしておけば良い場合がほとんどです。
フードワゴン、特に食べ歩き商品を販売する施設は特殊で、待ち列にいる人数だけをカウントする必要があります。
また、テーブルサービス形式の場合で、列形成をする場合には、客席数に加えて
パークの繁忙時間帯は、食事の時間帯に重なることも多いため、最大同時滞在者数を計算する際は、飲食施設のキャパシティをそのまま加算すれば良いと考えられます。
TDLの各飲食施設の形態と席数は、本稿末尾よりCSV形式でダウンロード頂けます。各データはTDLの公式HP[2]に記載の数値をまとめたものです。
その他
これ以外に、ショッピング施設やゲーム施設、ベンチ休憩、トイレ、歩行など、様々なところに人がいます。
特にショップ利用者やゲーム施設の利用者などは、ムラが大きいために誤差が大きくなります。日中の繫忙時間帯は、ショップ利用者は必ずしも多くないため、入店可能人数で計算することができません。おおよその人数を割り当てていく必要があります。例えば、小型店で10人程度、中型店で30人程度、大型店で50人程度など、現地で観察を行い、人数を割り当てる必要があります。
ベンチ休憩は、これもやはり繁忙日の繁忙時間帯に、現地で数と占有率を観察する必要があります。ただし、大手パークでは植栽の境界がベンチ代わりに使われている場合があるなど、一見ベンチに見えない場所もあるため、注意が必要です。
トイレは、トイレを除く同時滞在者数に1%程度をかければ良いと考えられます。これは、一般に成人のトイレの間隔が3~5時間おきとされていることと、子どもはトイレに行く頻度が高くなることを勘案して、平均3時間に1回と考え、トイレの平均滞在時間を3分程度としますと、パーク内ではおよそ2%をトイレで過ごすことになります。うち、半分程度は食事と同時に済ますと思われますので、1%程度を考慮しておけば良いと思われます。当然、トイレの混雑にはムラが発生しますが、同時滞在者数を算出するには十分な近似だと考えられます。
歩行者数は、アトラクション間の歩行距離に依存します。パークが大きくなれば、また、大型アトラクションの割合が高くなれば、歩行距離は長くなっていきます。東京ディズニーランドでは、丸12時間を、適度に休憩をはさみながら楽しむと、およそ10 km程度の歩行距離になると思われます。歩行速度を4 km/hと置くと、2.5時間。約20%を歩行に費やすことになります。歩道は十分なスペースがあることを前提に、同時滞在者数の20%が歩行者であると仮定しましょう。
パーク全体の同時滞在者数
ここまでの計算をもとに、パーク全体のキャパシティを求めてみましょう。
Σ(各施設の収容人数)
で求まります。
アトラクションの繁忙期の収容人数は、TDLの場合で約2.8万人。キャラクターグリーティングが0.2万人。最繁忙時間帯にパレードを開催して1万人。レストランが約0.9万席。ショップ等は0.2万人。ベンチは大部分がパレードで埋まるため、勘案しないこととして、上記の和に1.21をかけて、約6万人が最大同時滞在数になります。この場合、夕方以降の来園者も含めて、適切なチケット販売規模は7万~8万枚だと考えられます。
現状のTDLは、パレードによるキャパシティ増加を勘案しない策を取っていると考えられまして、最大同時滞在が約5万人、チケット販売数を6万枚程度に絞っていると推定されます。パレード開催中は、アトラクションの待ち時間が短くなる、人の流れが分断され、特定の施設へ向かう客数が少なくなる、などの事象が発生するため、パレードやショーが吸収できる人数は事実上少なります。満足度を1つの基準として導き出された数値だとは思われますが、同時滞在者数の観点でも妥当だと考えます。
飲食施設のキャパシティによる制約
また、最大同時滞在が昼食時間帯にかかる場合、飲食施設が十分なキャパシティを有しているかどうか、も重要な指標となります。同時滞在者の8割が園内で食事をし、同時滞在者の2割は軽食のみで済ませるとした場合、同時滞在者の6割を食事施設で捌く必要があります。
テーブルサービス以外の食事施設の座席の8割が昼食時間帯に6回転、テーブルサービスは全席が2回転すると考えますと、TDLの場合は能力が3.3万人程度となります。これを0.6で割って、最大同時滞在者数は5.6万人となりますので、収容人数から求めた最大同時滞在数に対応した能力を有していると考えられます。
なお、軽食施設は販売可能速度と販売すべき数量から、施設数を決定する必要があります。
最大入園ペース
入園者は、朝に集中します。さらに、ほとんどの人がアトラクションへと向かいます。このため、同時に多くの人を入園させてしまうと、一時的に待ち時間が長くなるなどして、列形成に余計な人手やコストが発生する可能性がありますし、あまりにも高いペースで人を入れると混乱が発生する可能性もあります。そこで、例えば開園から30分の時点での適切な入園者数を考えてみましょう。
前提条件として、簡単のために
- 開園から30分後までの時間を指定するラインスキップパスは発行しない
- 開園から30分後以降は、スタンバイとラインスキップの比率を1:1とする
- 全ての人が限界待ち時間90分以上のアトラクションにのみ集中する
- 上記アトラクションには、入園した人のうち、限界待ち時間の長さに比例した人数が向かう
- アーリーエントリー等はなく、開園時間から入園が開始される
- 1度アトラクションに乗車した人は、限界待ち時間が90分以上のアトラクションの待ち時間が、限界待ち時間+30分に至るまでは、それらのアトラクションに並び、全てが限界待ち時間に達すると、限界待ち時間が90分未満のアトラクションに並ぶ
- その際も、限界待ち時間の長さに比例して人数を分配し、重複は無視する
- アトラクションまでの歩行時間も含めて、入園にかかる時間とする
- ショーや飲食などに並ぶ人は、一切無視する
とします。
すると、開園からt分後にあるアトラクションに並ぶ人数は、1分当たりの入園者数をx人とおくと、
(xt -(稼働済みアトラクションの体験中人数の和))×(あるアトラクションの限界待ち時間)/(稼働中アトラクションの限界待ち時間の和)
となります。ここから、
(当該アトラクションの実運用効率)×(30 – t)/ 60
を引いたうえで、(そのアトラクションの実運用効率)/ 2で割って、(30 – t)を足せば、待ち時間が求まります。この待ち時間が、限界待ち時間+30分を超え始めると、運営に非効率や混乱を生じる恐れがある、と考えれば良いでしょう。
t = 30の時点では、(30 – t)が関与する項は0に落ちますので、TDLの場合、30分あたり1.3万人を超えたくらいから、かなり混雑を感じるレベルになってきます。ただし、TDLの場合は人気アトラクションの列形成能力が高く、十分なオペレーション能力を有するために、実際には30分で4.5万人程度入園できると思われます。この場合、上記の前提条件が機能せず、様々なアトラクションに同時に人が向かっていることも重要な役割を果たすと考えられます。
入園に時間がかかると、来園者にとっては大きなストレスになりますので、ある程度は過剰なペースの入園者を許容するオペレーションも必要になりますが、多すぎれば、園内の混乱によって、別のストレスを与えることになります。予め許容できる最大の入園者ペースを定めて、それに合わせたゲート設計が必要になります。
1日の入園者数
1日の入園者数は、満足度設計から考える必要があります。1日に体験可能なアトラクション・ショーの数が、十分な値になっているか。言い換えれば、大きな不満が出るほど待ち時間が長くなっていないか、という点が重要です。
1日の体験可能アトラクションは、
Σ{(実運用効率)×(アトラクションの営業時間)}
を求めて、これを入園者数で割れば求まります。通常の遊園地であれば、1時間に1アトラクション程度、大きなテーマパークであれば、2時間に1アトラクション程度が1つの目安になってくると考えられます。例えば、TDLがチケット販売数を6万枚程度に制限した場合、1人あたり平均6個のアトラクションを体験できる計算になります。
アトラクションの運用効率の制約条件
アトラクションの運用効率には、強い制約条件がかかります。まず、最もキャパシティの大きいアトラクションの1日の体験者数が、入園者数を超えてはいけません。1人2回以上体験しなければキャパシティを埋められないアトラクションは、そもそも過剰キャパシティです。一般には、入園者数の半分程度が適正であると考えられます。
また、キャパシティの大きい人気アトラクションが、一部の人にしか体験できないものになってしまうと、パークの満足度が低下するだけでなく、混乱を生じる可能性もあります。
この2点と、1日に体験できるアトラクション数を勘案すると、実はアトラクションに許容されるキャパシティの自由度は、極めて小さいことがわかります。この点は、[3]にまとめていますので、是非あわせてご覧ください。
ファイル
参考文献
[1] 東京ディズニーランド「アトラクション一覧」2025年8月31日閲覧
https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/attraction.html
[2] 東京ディズニーランド「レストラン一覧」2025年8月31日閲覧
https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/restaurant/list/
[3]
引用方法
引用時は、下記を明記してください。
Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250021.
利益相反
本稿に関わる利益相反はありません。
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