遊園地の収入とコスト4 – 収入

Author: Yu Shioji (塩地 優) 
Article type: Commentary (解説) 
Article number: 230021

遊園地の収入とコストのバランスを見る連載の第4回です。

前回まで、遊園地の支出側を見てきました。

今回は、収入側の計算をしていきたいと思います。ただ、収入は集客力次第という部分があります。そこで、ここでは、まずは1人あたりの単価、つまり客単価を予想して、それをもとにどの程度集客できればどの程度の売り上げになるか、そして儲けを出すためにはどの程度の集客が必要なのかを考えていきたいと思います。

想定規模は、大型ローラーコースター, 小型ローラーコースター, マウス系ローラーコースター, 観覧車, メリーゴーラウンド, ティーカップ, 回転系スリルライド, 汽車, シアターライド, シューティングライド, ゴーカートが各1個ずつ、キディライドが5個ある中規模の遊園地です。

 

チケット収入

遊園地の売り上げの大部分は、チケット収入に依存します。

あまり大きな遊園地ではありませんから、フリーパス料金で大人4,000円~5,000円、こども3,000円~4,000円程度になります。ここでは、土日祝や夏休み期間、その他繁忙期に上限価格、それ以外の一般平日に下限価格とするダイナミックプライシングを採用することにしましょう。それぞれ入場客数も違うので一概には言えませんが、ザックリ、平均値は大人4,500円、こども3,500円程度です。

「入園のみ」を許すかどうか、というのは難しいところですが、一般には無料のショーなどによって、乗り物に乗らなくても、乗った場合と同等に楽しめる場合はフリーパスのみのワンプライスとして、そうでない場合は入園券を販売します。ここで想定している遊園地は、ショーだけで1日過ごしてもらうことは苦しいので、入園券を販売することにします。大人1,500円、こども1,000円としましょう。

入園券のみの場合は、アトラクションごとのチケット販売も発生します。チケット種を増やすとややこしくなるので、500円, 1000円の券種1種、2プライス制としましょう。1000円は大型コースターのみで、それ以外のアトラクションは500円とします。8枚つづりを3,000円で販売します。これは、大人と子ども1人ずつが、4個のアトラクションに乗車する場合、フリーパスより約2,000円安くなるという料金設定です。

フリーパスと入園券のみの比率は6:4, 入園券のみのうち、4割の人が8枚つづり券を購入する(2人で共有する前提のため、8割が購入するという設定)と考えましょう。大人と子どもの比率は、いずれも2:1とします。そうすると、平均客単価は約3,500円となります。

 

飲食収入

最近は飲食費が高い施設も増えていますが、上げすぎると午前だけ、午後だけの滞在で食事は外で、というスタイルが増えてしまいます。今回は、ザックリと見積もることが大切ですので、大人の食事が1,000円、こどもが700円としましょう。

スナック類は、平均400円。ドリンクはペットボトル飲料を自販機を使って200円で販売とします。

持ち込みは飲料一本を除いて一応禁止ですが、ゲートでチェックはしないため、半黙認状態。入場者のうち、園内で食事をするのが5割、スナックを食べるのが2割、ドリンク購入が3割とします。

そうしますと、平均客単価が580円。前回ご紹介しました通り、費用計算に飲食料品の原価が含まれていませんので、3割を原価(ペットボトル飲料だけは原価7割)として、収入として考えて良いのは380円となります。

 

お土産

お土産は、平均単価800円で販売します。

取り立てて工夫を行っていないため、購入者は全体の2%。平均客単価は16円です。飲食費と同様に、3割を原価として、収入は誤差レベルですので、0円に落としましょう。

 

入場者数と収入の関係

以上から、平均客単価は3,900円と求まりました。では、入場者数と収入の関係を見てみましょう。

入場者数と収入の関係

1億円の収入を得るのに、2.6万人の入場者数が必要になることがわかります。年間2.6万人というのは、日当たり74人です。前回の記事で、年間の支出が47.4億円とわかっていますから、人数も単純に47.4倍して、日当たり3,500人(年間123万人)の入場者数が必要となります。

これは、平日でも2,500~3,000人の集客をしないといけないレベルです。よみうりランドで180万人(日当たり5,000人)、ひらかたパークで120万人(同3,500人)です。今回考えている遊園地は、これらより規模の小さいもので、かつ大都市圏にはないという設定ですので、いかに厳しい数字かがわかります。

設備投資先行型で、投資回収目途が無いというのは、資金集めが絶望的な状況です。この状況を打破するためには、

  • 来園者数を増やす
  • 客単価を上げる
  • コストカットする

のいずれかが必要になります。ただ、コストカットは往々にして顧客満足度の低下につながりますので、じり貧状態を招きます。これは最後の手段として、集客と客単価を上げる方法について、シリーズを分けて考えていきたいと思います。

 

付録: なぜ儲からないのに遊園地がたくさんあるのか

現状分析として、儲からないはずの遊園地が日本にたくさんある理由を知っておくことは大切です。

理由の1つは、かつては集客力がもっと高かったためです。例えば、志摩スペイン村パルケエスパーニャは2000年頃には200万人オーバーの集客力を誇りましたが、2017年には120万人程度まで落ちています。同様にとしまえんも、2000年ごろには160万人程度だったのが、2017年ごろには100万人を割り込むように。これは、施設の更新ができないために魅力が低下していった、というのももちろんありますし、よく言われる娯楽の多様化、景気の長期低迷と高齢化による社会保険負担増からターゲット世代の家計の余剰資金が低下したことなど、様々な理由が考えられます。

別の理由として、遊園地設置の目的が単独で儲けを出すためだけではない、という点も考えられます。例えば志摩スペイン村パルケエスパーニャは近鉄、ひらかたパークは京阪、そのほか園名からわかる東武動物公園や西武園ゆうえんち、富士急ハイランドなど、鉄道会社の沿線魅力向上と輸送能力の有効活用を目的とした遊園地があります。また、那須ハイランドパークは三菱地所による別荘地の魅力向上を目的としたものですし、グリーンランドは閉鎖された炭鉱の跡地利用と地域振興が絡んでいます。さらに、これらの経営母体は資金力があるため、遊園地開業の資金調達にも有利、という点があげられます。

もう1つ、多くの遊園地ができた時代の背景として、「余暇をどう使うか」が議論されるような時代だった、という点も忘れてはいけません。これは、娯楽の多様化を逆からとらえただけです。どういうことかと言いますと……、「休日」という概念が曖昧だった時代から、戦後すぐの週休1日制、1980年代頃の部分的週休2日制と休みが増えるにつれて、休みの日に何をすべきか、というのが議論されました。「レジャー」という概念が持ち込まれたような時代です。画一的な概念として、「休日にすべきことはこうだ」という情報が出回ると、「休みの日に何をして良いかわからない」という余暇に慣れていない時代ですから、多くの人がそうした情報に従って、家族連れであれば遊園地を訪れていたのです。まだ情報源はテレビや雑誌などでしかなくて、インターネットのように情報を自分から取りに行くことができない時代ですから、接した情報に従わざるを得なかったんですね。

 

引用方法

引用時は、下記を明記してください。

Yu Shioji, J. Amusement Park (2023) 230021.

 

利益相反

本稿に関わる利益相反はありません。

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