JUNGLIAの狙いと事業成立性

Author: Yu Shioji (塩地 優)
Article type: Article(研究)
Article number: 240004

沖縄本島北部の名護市から今帰仁村にかけて、2025年開業が発表されているテーマパーク「JUNGLIA」。

現地調査も踏まえて、事業に成立性があるのか、周辺地域への寄与はあるのか、などを検討しましたので報告します。

 

2024/2/10に、沖縄県が交通渋滞の解消と、地元産品の消費、雇用の確保を目的とした部局横断組織を立ち上げていることが報道されました。以下の記事は、それ以前の情報です。

 

JUNGLIAについて、現在公表されている情報

ジャングルをテーマにしたパークのイメージ(JUNGLIAとは異なる施設のものです)

現在わかっている情報は、下記の通りです。

  • 2025年開業
  • アトラクション数十のうち、気球、ジップライン、恐竜のアニマトロニクスから逃げるジープ(運転可能)、大型ブランコ、恐竜に乗る
  • 開業時従業員数は1,200-1,300
  • 投資額は700億円
  • 運営会社のジャパンエンタテイメントと、ホールディングスは合わせて500億円ほどの資産を保有、うち200億円弱は資本金を減資して調達
  • 「美ら海水族館の集客数の半分でも採算がとれる」=年間約100万人で採算がとれる
  • 山間地に開設し、テーマはジャングルなど、海ではなく森や山の自然

この情報をベースに、事業性の検討を行います。

 

想定客単価の計算

目標来園者数については、年間約100万人が最低ラインと公表されていますが、まずはパークのキャパシティがどの程度あるのかを検討します。

アトラクションキャパシティからの、入園者数の算出

発表されているアトラクションは、ジップラインや大型ブランコなど、かなり時間効率(1時間に何人の体験者を捌けるか)が悪いものばかりです。時間効率は、一般的な遊園地では500人~1,000人/h、大型テーマパークでは1,000人~2,000人/hに設定されることが多いのですが、JUNGLIAでは50~300人/h程度になると想定されます。

一般に、パークのキャパシティは、アトラクションのキャパシティ×1時間分で設定されることが多いです。これは、パーク内にいる人が、すべてのアトラクションに均等に並んだ場合に、待ち時間が1時間になる、という設定ですが、実際には一部の人気アトラクションに偏ったり、あるいはアトラクションに並んでいない人も発生しますので、実態はもっと待ち時間が短くなります。おおよそ、「ちょうど良い混雑」がこの程度だ、という過程です。仮に時間効率の平均値を150人/h、アトラクション数を30と置きますと、JUNGLIAのキャパシティは150×30 = 4,500と算出できます。

ただ、JUNGLIAはリゾート型のテーマパークを志向していますので、食事をはじめとして、アトラクション以外の要素に時間を多く使う人が発生する、ということも想定していると考えられます。例えば、通常のテーマパークでは食事時間が1食平均30分程度、JUNGLIAでは1時間30分程度になると考えますと、営業時間内で2食、2時間分の差が発生します。10時間営業の場合、来園者のうち20%は、通常より多くレストランに滞留することになりますので、アトラクションから算出されるキャパシティは1.25倍になります。つまり、4,500×1.25 = 5,625が想定キャパシティとなります。

従業員数からのキャパシティの算出

開業時の従業員数は、1,200 – 1,300人とされています。これを、他のパークと比較することで、JUNGLIAのキャパシティを算出してみます。

例えば、東京ディズニーランドはオープン時のキャパシティが5万3,000人、従業員数が6,500人でした[1]。現在は、キャパシティ約10万人に対して、従業員2万2千人を抱えます。

USJは、現在6万人のキャパシティに対して、従業員数が約1万2千人。

ナムコナンジャタウンは、開業時キャパシティが5,500人に対し、従業員数430人。

以上を表にまとめます。

キャパシティ従業員数従業員1人あたりキャパシティ
ディズニー開業時5300065008.153846154
ディズニー現在100000220004.545454545
USJ現在60000120005
ナンジャタウン開業時550043012.79069767

従業員1人あたりのキャパシティには、4.5~13程度まで幅がありますが、現在の大手パークは、およそ5で一致しているようです。

これをJUNGLIAの例にそのまま当てはめますと、キャパシティは5,400 – 7,500人程度になります。JUNGLIAは高級志向のパークだと思われます(後述)ので、キャパシティは下限の5,400人程度かそれ未満であると予想されます。

キャパシティから客単価の算出

以上、2パターンの試算から、JUNGLIAのキャパシティは5,500人程度であると予想されます。年間を通してフルキャパシティで入場者があった場合、200万人の動員となります。ですから、想定される入場者数は最低ラインが100万人、最大が200万人という幅があることになります。

少し古い情報ですが、テーマパークの初期投資は、売上高の2~2.5倍程度が適切であるとされます[2]。これをそのままJUNGLIAに適用しますと、初期投資が700億円ですから、売上高は280~350億円。これを100万人~200万人の入場者数で割りますと、客単価は1万4千円~3万5千円となります。

「100万人でも成立する」という言葉を額面通り受け止めますと、最低客単価は2万8千円となってしまいますが、この発言には注意が必要です。運営会社のジャパンエンタテイメントと、ジャパンエンタテイメントホールディングスは、合わせて500億円ほどの資産を保有、うち200億円弱は資本金を減資して調達しています。会社設立直後に減資していることから、出資者の同意を得て資産化していることがわかります。ですから、会社としてはかなり長期目線で資金調達ができています。加えて、投資は土木作業が主体で、一度エリアが出来上がってしまうと、追加投資は大きくない可能性が高いです。このため、実際には客単価はもう少し低くても成立すると思われますが、ここでは最低客単価を2万5千円、家族4人で10万円だと考えることにします。

客単価のバラツキの想定

一般的に考えて、客単価2万5千円で1日5,000人というのは、かなり意欲的な目標です。現実的には、ボリューム層となる客層は、単価を1万円前後に設定して、それ以外の富裕層により大きな額の単価を設定する、と考えられます。ここでは、その比率を考えてみましょう。

まず、図1のようにピークが2山ある場合。この場合、1万円85%、10万円15%程度の分布で、全客2万5千円の客単価の場合とおおよそ同等の収益になります。集客の最低ラインは、全日程で客数を平均化すると、1日約3,000人となります。この15%、すなわち、1日450人程度が10万円の客単価、ということになります。

図1 ピークが2山ある場合の客単価分布のイメージ

次に、図2のようにピークが1山で、すそ野が広い場合を考えましょう。この場合、カーブの形状次第ではありますが、1万円のところに確率密度のピークが来る、ベースラインが無い対数正規分布に従うという設定にすると、1万円以下が約21%、1~2万円が34%、2~3万円が20%、3~4万円が10%、4~5万円が6%、5~10万円が8%といった分布で、一律2万5千円の場合とおおよそ同じ収益となります。1日当たりの人数に直しますと、1万円以下が630人、1~2万円が1,020人、2~3万円が600人、3~4万円が300人、4~5万円が180人、5~10万円が240人といったイメージです。

図2 ピークが1山の場合の客単価と割合の分布イメージ

後者の方が現実的なシミュレーションに見えますが、いずれにしても客単価5万円以上の高単価層を、数百人単位で集客しなければならないことがわかります。

 

客単価設定の妥当性

ネスタリゾート神戸との比較

JUNGLIAのアトラクションは、現状わかっている範囲では、同じく株式会社刀がプロデュースした、ネスタリゾート神戸に近いものがあります。

ネスタリゾート神戸は、ジップラインや丘を利用したアクティビティ、アスレチックなど外遊びアトラクションが主体。加えて、BBQと温泉、宿泊施設があります。アクティビティ数は40種類とされています。このため、施設規模としてもJUNGLIAに準じるものだと考えられます。

アトラクション利用がフリーパス制で、約4,000円。食事はBBQ中心なので、やや客単価高めで3,000円程度と考えますと、宿泊を除けば客単価6,000円~7,000円程度ではないかと思われます。これと比べますと、JUNGLIAの客単価設定はかなり高いことがわかります。

USJとの比較

比較対象として、やはり株式会社刀代表の森岡氏が再建に携わった、USJの例を見ておきます。こちらは、アトラクション数は約35。開業時の総工費は、JUNGLIAの倍以上の1,700億円です。

入場料金は、大人8,600円~のダイナミックプライシング。食事が1,500円~のイメージですので、客単価は大人1万円~でボリュームゾーンはお土産込み1万5千円程度ではないかと思われます。

待ち列をスキップできるチケットは、5,500円~42,000円。最も高額なツアーで、1人7万5千円~10万円(入場料別、食事2食込み)です。したがって、客単価の最高額は、11万円+お土産代程度となります。

すなわち、JUNGLIAの客単価設定は、USJと同等程度であると考えられます。これは、投資額と体験内容からすると、かなり意欲的な設定です。旅行中は、滞在日数削減のために待ち時間低減チケットを売りやすい環境ではありますが、それでも旅行客の予算額(後述)からしますと、沖縄旅行の最大の目的地にならなければ苦しい価格帯です。

 

1日5,500人を受け入れるインフラはあるか

沖縄北部地域は、モノレールなどの軌道型公共交通機関はありませんので、来園方法はレンタカーまたはバスとなります。特に、前述の価格帯を考えますと、ほぼレンタカーの利用になると考えられます。1日5,500人となりますと、2,000台規模のクルマが押し寄せることになります(キャパシティ1回転しかしない場合を想定)。

自動車でのアクセスは、名護市街から先がネックとなります。名護市までは、南部側からは沖縄自動車道と、国道58号(名護湾沿いまたは名護東道路)を経由することになります(図3)。名護湾沿いは片側2車線、名護東道路は片側1車線ですが、ほぼトンネルで構成される規格の高い道路です。合わせて2万台/日を超える設計値になっていると思われますので、ここまでは問題がありません。

図3 ジャングリアにアクセスする主要道路

問題は、その先です。アクセス方法は、県道84号を使うか、国道505号から迂回するかの2パターンがあります。いずれも片側1車線で、制限速度40km/hの道路です。計画交通量は、多くても2つあわせて8,000台/日。何より問題なのが、この2つのルートは、美ら海水族館のある海洋博公園に向かう、迂回ルートとなっていることです[3]。美ら海水族館は、ピーク時には、1日2万人を超える人出があります。少なくとも5,000台以上のクルマが海洋博公園に向かうことになります。ピーク時期は、美ら海水族館、JUNGLIAともに重なると考えられますので、7,000台以上のクルマが、午前中に集中して通過します。

周辺道路の規格として、1日で受け止められない台数ではありませんが、交通が集中すれば、当然渋滞が発生します。約10㎞の区間で、のろのろ運転が継続すると考えますと、通常時+1~2時間程度の追加所要時間が発生することになってしまいます。

滞在型リゾートを志向すると考えますと、駐車場が至近にあることは必須で、渋滞区間をバス輸送に切り替えるなどの対処法も取りづらい。したがって、開業後しばらくは、特に繁忙期には交通渋滞に悩まされることになると予想されます。横浜ドリームランドなど、過去の事例もあわせて考えますと、美ら海水族館も含めて北部地域へのネガティブイメージの発生すら想定されます。

なお、将来的には名護東道路がJUNGLIA付近まで延伸される計画があります。ただし、これはまだ計画・調査中の段階で、開業時点には間に合わないと考えられます。

 

観光客の誘客余地はあるか

沖縄の入域者数は、コロナ禍の影響を除けばおよそ1,000万人、うち外国人が300万人程度です。このうち、最も消費額の大きい中国本土からの観光客が70万人程度[4]。

現状では、100万人~200万人の誘客というのは、全観光客の10~20%、ターゲットを外国人に絞るなら、その30%以上が求められます。日本人観光客の中で、世帯年収が1,500万円を上回る層は、全体の約10%、およそ70万人前後です[5]。2万5千円/人規模の消費余力があるのは、外国人観光客も含めて300万~400万人程度と想定されます。このうち、半分を集客していく必要があります。

美ら海水族館は年間200万人の集客がありますが、入館料は大人2,180円です(2024年1月現在)。これと同じスケールの集客を、平均客単価2万5千円で行うというのは、かなり難しいことがわかります。

[4]では、1人当たりの消費額が、ハワイと比べて半分以下であることが述べられていますが、同様に1人当たりの滞在日数も半分以下です。このため、1日当たりの消費額は、いずれも約2万円で、大きな差はありません。沖縄の観光客の、1日当たりの支出は、ハワイ並になっているのです。ここからさらに、滞在を1日伸ばして、ホテル代等+2万5千円を支出させる、というのはターゲットの幅が相当に狭いと考えられます。

また、海外からの観光客を誘客するためには、目玉施設に日本語を必要とする施設は使えません。翻訳を介すと、どうしても臨場感が薄れがちなので、言語によらない施設を中心に設置していく必要があります。JUNGLIAの構想をする会社が得意とする、イマーシブシアター系アトラクションが使いにくい、というのは1つの難点です。

一方で、JUNGLIAは、これまで沖縄に少なかった、森・山側のリゾートです。ハワイは海だけではなく、特にハワイ島などでは山サイドの体験も人気があります。沖縄でも、その潜在需要は十分にあると考えられます。ザックリとハワイの例から考えますと、1000万人のうち、170万人がハワイ島を訪れます。このうち半数が山側の自然を体験していると考えると、沖縄でも100万人弱の潜在需要がある、さらに同じ島内であることから、実際にはもっと多い需要が見込める、と考えられます。

ただし、それが作られたテーマパークで良いのか、という点には疑問が残ります。自然の中をトレッキングする、エンタメ要素の強いツアーなども、当然考えられているとは思いますが、それだけで2万5千円の消費になることはあり得ませんので、相当な工夫が必要だと思われます。

美ら海水族館の大水槽

 

地域への波及効果はあるか

美ら海水族館を除くと、地域の主要な観光資源は、今帰仁城、古宇利島、伊江島などです。特にJUNGLIAからアクセスのよい今帰仁城、古宇利島への観光客増は期待できます。

ただ、JUNGLIAは美ら海水族館と同じく、「目的地」になる場所で、さらにアクセスもレンタカーが主体になると考えられます。特に宿泊滞在ではなく、日帰りで向かう場合は、周辺への立ち寄りの可能性が低下します。

一方で、美ら海水族館とJUNGLIAを2大目的地として、滞在型へのシフトがうまくいけば、特に美ら海水族館は半日以下の滞在時間ですから、周辺への波及効果も期待することができます。滞在型へのシフトのためには、少なくとも年間100万人規模を受け入れる体制にはない、ホテルの整備が必要になります。ただ、この地域は沖縄の高級リゾートに必須のきれいなビーチが少ない。現状では、恩納村以北の宿泊施設に頼らざるを得ません。将来的には、森・山型のリゾート開発を進めていく必要があります。

恩納村のビーチ

滞在型化が周囲に経済的なメリットをもたらすためには、複数施設が集積した、道の駅型の施設を整備し、地元産品を扱う必要があります。現在は、事実上、沖縄自動車道と名護北道路の間の許田にしか道の駅がありません。特に外国人観光客は土産品の消費額が多いので、地元産品をうまく土産品に昇華して、かつ立ち寄りを促せるような施設を作っていかなければなりません。

 

結論

結論としては、JUNGLIAの事業性は、現状明らかになっている情報だけでは、かなり厳しいと考えられます。特に降水日数が年間131日と多い沖縄では、屋外型のテーマパークは苦戦が予想されます。例えば、年間のうち晴天日のみ、234日間すべて5,500人入ったとしても、約130万人にしかなりません。雨天や曇天に対する対策が充実していないと、100万人というのは、かなり苦しい数字になります。

しかしながら、JUNGLIAの運営会社の背後に見え隠れする株式会社刀は、数字ベースのマーケティングが得意な会社です。ここで述べたような懸念点は、既に検討済みで、対策を講じてあって、集客数にも何らかの目途があると考えます。今はまだ開示されていない情報の中に、秘策が隠されている「はず」です。その秘策が明らかになり次第、集客のメカニズムを再考したいと思います。

短期的には、同じく刀が運営するイマーシブ・フォート東京の成否が、JUNGLIAの今後を占う1つの指標となりそうです。イマーシブ・フォート東京は、単純な入場料は6,800円ですが、一部の有料アトラクションを体験すると、すぐに約1万円、高額アトラクション体験で1.5万円がかかります。筆者は1.5万円のチケットと、3,500円の追加有料アトラクションチケットを購入しています。これに飲食を加えれば、ゆうに2万円を超えます。お台場は年間来場者数5,500万人を誇る地域です(その多くが展示会等と想定されますが)。そこで、この高額施設がどの程度通用するのかは、JUNGLIAの先行指標として重要だと考えられます。

 

参考文献

[1] Report Leisure No.392

[2] Report Leisure No.553

[3] 海洋博公園HP https://oki-park.jp/sp/kaiyohaku/information/detail/3125 (2024年1月18日閲覧)

[4] 沖縄観光の現状と課題 内閣府 沖縄総合事務局 https://www.ogb.go.jp/-/media/Files/OGB/Unyu/kankou/shinkou/2021_8_5.pdf (2024年1月18日閲覧)

[5] 沖縄県観光統計実態調査 https://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoseisaku/kikaku/report/quest/jittai_top.html (2024年1月18日閲覧)

 

引用方法

引用時は、下記を明記してください。

Yu Shioji, J. Amusement Park (2024) 20240004.

 

利益相反

本稿に関わる利益相反はありません。

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