ディズニーシーの待ち時間は、ファンタジースプリングスのオープンによってどう変化するか

Author: Yu Shioji (塩地 優)
Article type: Article(研究)
Article number: 240013

2024年6月6日に、東京ディズニーシーに新エリア、ファンタジースプリングスがオープンします。ここに新たに登場する4つのアトラクションによって、これまでにディズニーシーにあったアトラクションの待ち時間はどう変化するのか。特に、ソアリンやトイ・ストーリー・マニアなどの人気アトラクションの待ち時間は、果たして減るのか。パークのキャパシティを考慮しながら、実際に計算してみます。

 

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前提条件

以下の計算は、ファンタジースプリングスのすべてのアトラクションがスタンバイで利用できることを前提としています。開業から当面の間、ファンタジースプリングスのアトラクションは、特定のチケットやパスを持っていないと利用できないことが発表されています。

このため、当面は、ファンタジースプリングスのキャパシティ分、パークの入園者数が増えると、従来アトラクションの待ち時間は増える傾向になると考えられます。増加幅は、人気アトラクションで10分‐15分程度になる見込みです(下記計算と同様の計算を行った結果です)。

また、混雑日を前提に計算しています。閑散日は、もう少し待ち時間は短くなるはずです。

 

アトラクションのキャパシティと待ち時間

予想待ち時間を計算するには、まずはアトラクションごとの、1時間当たりのキャパシティを求める必要があります。各アトラクションごとに厳密なキャパシティは異なりますが、ここでは厳密な計算をするわけではありませんので、大型アトラクションは約2,000、中型アトラクションは1,000、小型フラットライドは350または500または700に丸めてしまっています。なお、ソアリンはややキャパシティが低いため、1,500に丸めています。

実際には、理論効率よりも低い効率で運営されます。例えば、横4人の座席に3人しか座っていない状態で発車したり、シアター形式なら突発トラブルに備えて予備座席を設けたり、理論値では1分間隔で出発するところが、乗降に手間取って1分10秒間隔になったりするためです。その実際の効率を、ここでは約70%と置いています。

待ち時間は、最近の代表値を下記の表のように採用しました。

ただし、各アトラクションの待ち時間表示は「乗るまで(あるいはプレショーまで)」の待ち時間で、各アトラクション内には乗車中のゲストもいます。ですから、各アトラクションにどれくらいの人が滞留しているのかを見るためには、それぞれのアトラクションに乗車している人もカウントしなければなりません。アトラクション体験中の人数は、実効率×体験時間で計算ができますので、プレショーや乗り降りにかかる時間を加味した体験時間を、待ち時間に足して考えます。

そうすると、各アトラクションの中またはキューラインにいる人の数は、実効率×(待ち時間+体験時間)/60で、以下の表のようになります。

アトラクション名 理論効率(人/時) 実効率 待ち時間 体験時間(分) アトラクション滞留人数
ソアリン 1500 1050 120 12 2310
トランジットスチーマーライン(メディテレーニアンハーバー) 1000 700 15 8 268.3333333
ヴェネツィアンゴンドラ 1000 700 30 12.5 495.8333333
タワーオブテラー 2000 1400 90 3 2170
トイストーリーマニア 2000 1400 120 7 2963.333333
ディズニーシーエレクトリックレールウェイ(アメリカンウォーターフロント) 1000 700 20 3.5 274.1666667
タートルトーク 1000 700 60 30 1050
トランジットスチーマーライン(アメリカンウォーターフロント) 1000 700 15 16 361.6666667
アクアトピア 2000 1400 30 2.5 758.3333333
エレクトリックレールウェイ(ポートディスカバリー) 1000 700 20 3.5 274.1666667
ニモ&フレンズシーライダー 2000 1400 45 10 1283.333333
インディジョーンズ 2000 1400 60 3 1470
レイジングスピリッツ 2000 1400 60 2 1446.666667
トランジットスチーマーライン(ロストリバーデルタ) 1000 700 10 7 198.3333333
フライングカーペット 1000 700 20 2 256.6666667
シンドバッド 2000 1400 10 10 466.6666667
マジックランプシアター 1500 1050 50 23 1277.5
キャラバンカルーセル 3000 2100 2 3.5 192.5
フライングフィッシュコースター 1000 700 30 2 373.3333333
スカットルのスクーター 350 245 20 2.5 91.875
ジャンピン・ジェリーフィッシュ 700 490 20 2 179.6666667
バルーンレース 700 490 20 2.5 183.75
ワールプール 500 350 20 2.5 131.25
センターオブジアース 2000 1400 70 3.5 1715
海底二万マイル 2000 1400 25 5.5 711.6666667

 

パークのキャパシティと、アトラクションにいる人の割合

さて、パークのキャパシティは、最近ではおおよそアトラクションの理論効率の2倍で設定されてきました。みんながアトラクションに向かったら、すべてが2時間20分待ちくらいになる人数です。ただし、コロナ禍を経て人数が10%とちょっと減っています。

単純にアトラクションの理論効率の2倍で計算をすると、パークキャパシティは7万人となりますが、実際には6万人程度になっていると言われています。ですから、ファンタジースプリングスができることによるキャパシティの増加も、同じ割合で減算することにします。

入園している6万人のうち、実際にアトラクションに乗っているのは、上述のアトラクションに並んでいるか、乗っている人の人数の和を取って、4万1千人です。つまり、入園者数の約68%がアトラクションに滞留していると考えることができます。

 

ファンタジースプリングスの開業に伴うキャパシティの増加

ファンタジースプリングスの開業とともに、4つのアトラクションがオープンします。アナ雪とラプンツェルは、いずれもボートライド。カリブの海賊やスモールワールド(2,000人/h)が20人乗りボートなのに対して、これらは16人乗りです。したがって、予想理論効率は1,500人/h (2隻を1分おきに発船できれば1,920人/hなので、理論効率としては2,000人/hの可能性もありますが、ネバーランドアドベンチャーと比べると小規模なアトラクションということもあって、1,500人/hを採用します)。

ピーターパンは、ネバーランドアドベンチャーが大型ダークライドで2,000人/h。ビジーバギーが小型ライドで1,000人/h。

したがって、コロナ禍前の計算方式では、パークのキャパシティは7万人→8万2千人へと増加します。これにコロナ禍後の補正をかけると、6万人→7万人に増加。パークキャパシティとしては、17%ほど増加する計算です。

さらに、入園者数のうち一定の割合がアトラクションエリア内に滞留すると考えると、7万人の68%で、4万8千人がアトラクションのキューラインで待っているか、アトラクションに乗っていることになります。

 

予想待ち時間の算出

それでは、いよいよ待ち時間を算出していきましょう。

まずは、アトラクションに滞留している人のうち、特定のアトラクションにいる人の割合を求めます。式で表すと、(あるアトラクションの滞留者数)/(全アトラクションの滞留者数)です。

この時、今まで求めてこなかったファンタジースプリングスの4アトラクションについては、それぞれの予想待ち時間が、ネバーランドアドベンチャー: 120分、フローズンジャーニー: 120分、ランタンフェスティバル: 90分、ビジーバギー: 60分となるように割合を調整しています。その結果が、以下の表の「人数比(FS含む)」の列です。

この人数比に、先ほどの全アトラクション滞留者数、4万8千人をかけると、各アトラクションの滞留者数が求まります。

さらに、(滞留者数-体験中人数)を実効率で割って60をかけると、予想待ち時間が求まります。

アトラクション名 人数比(FS含む) アトラクション滞留人数予想 予想待ち時間
ソアリン 0.038164628 1867.179742 94.69598527
トランジットスチーマーライン(メディテレーニアンハーバー) 0.004433265 216.8946165 10.59096713
ヴェネツィアンゴンドラ 0.008191903 400.7835305 21.85287405
タワーオブテラー 0.035851621 1754.017334 72.17217144
トイストーリーマニア 0.048958665 2395.270982 95.65447068
ディズニーシーエレクトリックレールウェイ(アメリカンウォーターフロント) 0.00452964 221.6097169 15.49511859
タートルトーク 0.017347558 848.7180647 42.74726268
トランジットスチーマーライン(アメリカンウォーターフロント) 0.00597527 292.3362223 9.05739048
アクアトピア 0.012528792 612.9630467 23.76984486
エレクトリックレールウェイ(ポートディスカバリー) 0.00452964 221.6097169 15.49511859
ニモ&フレンズシーライダー 0.021202571 1037.322079 34.45666053
インディジョーンズ 0.024286582 1188.205291 47.92308388
レイジングスピリッツ 0.02390108 1169.344889 48.11478096
トランジットスチーマーライン(ロストリバーデルタ) 0.003276761 160.3134122 6.741149618
フライングカーペット 0.004240514 207.4644158 15.78266421
シンドバッド 0.007710026 377.2080287 6.166058374
マジックランプシアター 0.021106196 1032.606979 36.00611307
キャラバンカルーセル 0.003180386 155.5983119 0.945666053
フライングフィッシュコースター 0.006168021 301.766423 23.8656934
スカットルのスクーター 0.001517911 74.26283066 15.68681567
ジャンピン・ジェリーフィッシュ 0.00296836 145.2250911 15.78266421
バルーンレース 0.003035823 148.5256613 15.68681567
ワールプール 0.002168445 106.0897581 15.68681567
センターオブジアース 0.028334345 1386.239506 55.91026453
海底二万マイル 0.01175779 575.2422438 19.15323902
フローズンジャーニー 0.045392778 2220.812269 119.9035582
ランタンフェスティバル 0.033972302 1662.072877 89.47559295
ネバーランドアドベンチャー 0.060330953 2951.652825 119.9994068
ビジーバギー 0.014938175 730.8405557 60.1434762

代表的なアトラクションをピックアップしてみると、

  • ソアリン: 120分→95分
  • トイ・ストーリー・マニア: 120分→95分
  • タワー・オブ・テラー: 90分→70分
  • インディ・ジョーンズ・アドベンチャー: 60分→50分
  • マジックランプシアター: 60分→35分
  • センター・オブ・ジ・アース: 70分→55分

と大きく待ち時間が短くなることがわかります。

ただし、この待ち時間は、前述の通りファンタジースプリングスの各アトラクションを、スタンバイで利用できることが前提です。当分の間は、10分から15分程度、待ち時間が増えてしまうと予想されます。全アトラクション利用の正常化が待ち遠しいですね。

 

引用方法

引用時は、下記を明記してください。

Yu Shioji, J. Amusement Park (2024) 240013.

 

利益相反

本稿に関わる利益相反はありません。

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