Author: Yu Shioji (塩地 優)
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Article type: Article (研究)
Article number: 260003
筆者はジャングリア沖縄の開業前に、9ページにわたって問題点の指摘を行いました。ジャングリア沖縄が2025年7月25日の開業から1年以上経過したため、これらの指摘がどの程度正確だったのか、また、見落としていた事項や誤っていた事項が無いか、といったことを検証していきます。

地元との対話姿勢
シリーズの第1回では、ジャングリアのプロジェクトを主導した刀の実績を見ると、必ずしも成功ばかりとは言えないため、ジャングリアは過去のプロジェクトによる先入観を持たず、単独の事業としてフラットに見ていくべきだ、という指摘をしました。これについては事実に基づく指摘のみであって、将来予測が含まれていません。したがって、本稿で検証すべき事柄もありません。
第2回では、ジャングリアの成功の基準について議論をしました。こちらも大筋では一般論や、当時判明していた事実をもとにした議論をしていたもので、検証すべき事柄はほとんどありません。唯一検証すべきは、ステークホルダーの1つとしてあげた、地元の方との対話姿勢です。「急成長するアジア富裕層の観光需要を取り込む「変化の起点」を沖縄の地に創り」[1]といった事前の説明から、「ジャングリアのために世界から海を越えて来るということはまず想定していない。」[2]といった説明に変化したことなどを踏まえて、真摯で誠実な説明をしていかなければ、地元の反発につながり、このことが事業の継続性に疑問符を付ける可能性があると指摘しました。

例えば、開業前にジャパンエンターテイメントが発表した、関西大学の宮本教授による経済波及効果の試算結果は、15年間で約6兆8,080億100万円[3]、初年度は約3,153億8,400万円[4]でした。これに対して、開業1周年時にジャパンエンターテイメントが発表した、りゅうぎん総合研究所による開業初年度の経済波及効果は、494億円[5]でした。ジャパンエンターテイメントは、この差異には言及せず、開業1周年のプレスリリースで、「この波及効果は非常に大きく、テーマパーク内での直接的な消費にとどまらず、宿泊業、対個人サービス業、小売業、飲食サービス業など、県内の幅広い産業に多大な経済的恩恵をもたらしています。」と述べています[5]。このように、当初自らのプレスリリースでも言及した数字と比べて1/6以下の数字を、その理由に振れることなく「非常に大きく」と説明することは、不誠実な表現だと捉えられる可能性があります。
しかしながら、このような公表方法が不誠実であると大きく議論されるようなことはなく、事業の継続性に影響を与える事態には至っていません。その理由として、
- もともとの期待値が高くなかった
- ジャングリアと地元の信頼関係が醸成されている
- ジャングリアに対して興味を持っている方が少ない
などの仮説が立ちます。このうち、どれが理由であったとしても、地元に対する対話姿勢が事業の継続性に影響を与える可能性は低い、と考えられます。したがって、この点は開業前の指摘が過剰であった、といえます。
集客数の問題
シリーズの第3回では、集客上の懸念を考えました。ジャングリアは、当時年約300万人(2025年は350万人)だった美ら海水族館の入館者数の、半分で採算が取れるとしていました。つまり、入園者数は年150万人で採算が取れることになります。これに対して、実際にはスパを含む、かつ同日にパーク入園とスパ入場を行った方を2人と数える数え方で、100万人だったと思われます。パーク入園者数の推定値は85万人です。これは、採算ラインを大きく割り込んでいると思われます。開示されている情報が不足しているため、個別の理由の正しさを検証することはできませんが、集客数が十分でなかったことは確かです。

集客上の懸念として指摘していたのは、
- アクティブ系のテーマパークが主たるターゲットとする10~20代の友人同士、30代~40代のファミリー層が、沖縄入域者に占める割合が低く、50%未満と推測されること
- 多くの方にとって、パークによる説明から、7,000円近い入園料を払ってわざわざ訪れるほど魅力的だと感じ取れるアトラクションが少ないと思われること
- 単に「満足した」というレベルではなく、「感動した!!」と思えるような体験でなければ口コミ効果は期待できないが、そういった体験ができるアトラクションが無いと思われること
- 開園早々に3~4時間待ちになるなど、待ち時間が長くなると予想されること
- 上記に対してすぐに対策を打ちだすと考えられるが、満足度を改善したとしても、あとから訴求する場合はその効果が薄れてしまうこと
でした。
このうち、定量的なのは待ち時間で、これが大きな問題の1つとなりました。実際には、現状の最大入園者数と思われる、1日5,000人が入園したと思われる開業直後の日には、290分などの待ち時間を記録したことが話題となりました。オペレーションがこなれていなかったこともあって、予想よりも長い待ち時間になったと思われます。同じく5,000人が入園したと思われる、12月26日には最大待ち時間が130分程度となっています。オペレーションの効率化と、午後チケットの販売などによる入園タイミングの分散が奏功したと思われます。これは、すぐに対策を打ちだす、という予想と一致します。
また、開業後には、事前の予想では洗い出せていなかった問題点も明らかになりました。
- 開業前にPRしていたイメージと、実際のパークやアトラクションとのギャップ
- 日陰や屋内施設の不足等、暑さ対策の不十分さ
などです。前者に関しては、アトラクションが十分魅力的なものにはならない、ということは予想していました。しかしながら、このことがこれほどまでに大きな話題となることは、予想できていませんでした。大きな話題となった要因としては、森岡氏の手腕に対する疑問が蓄積していて、ジャングリアの開業を機に一気に顕在化したこと、多くの消費者が、過大な広告に対して強い嫌悪感を抱いていることなどがあげられます。テーマパークは体験内容が見え、待ち時間は数値化されますから、官能的で実際の効果がわかりにくい日用品などと比べて、批判を受けやすい傾向にあります。また、テーマパークを訪れる人々が、充足しているように見えることも、批判を呼ぶ原因となります。イメージ映像や画像は、それがイメージであって、実際の体験内容とは異なることが明確に分かるように提示すること、実際の体験内容を提示していると受け取られるイメージは、可能な限り実際の体験に近い表現を行うことなどが求められます。
日陰の不足については、そうした設備に対してどの程度の投資を行っているのか、という情報が不足していたため、予想が難しかった点である、と考えています。ただし、ジャングリアと似た体験内容であるネスタリゾート神戸にも、日陰はほとんどありませんでした。このことから、日陰が少ないこと自体は予想が可能です。また、沖縄の日差し、紫外線の強さ、テーマパークらしいアトラクションがあるため、屋外での待ち時間が長くなることなどを踏まえると、批判を呼ぶことは、予想が不可能ではなかったと考えます。これら2点は、筆者の思考が浅かったために到達できなかった問題点で、反省が必要です。
なお、集客上は、これらの2点はマイナスになった部分とプラスになった部分があると思われます。マイナスは、当然ながら2点がネガティブな内容であることです。これを受けて訪問を取りやめた方もいらっしゃるでしょう。対して、これら2点が極めて大きな話題となったことで、ジャングリアというパークの存在を認知した方、怖いもの見たさで行ってみようと思った方などを生じて、集客上プラスになった、という側面も考えられます。どちらの効果が大きかったのかは、仮に調査を行っても正確な把握が難しいですが、ネガティブな効果だけではなかった、ということは理解しておく必要があります。
「想像で語るので、話半分で」と書いてはいますが、集客数の予想も行っています。予想はパーク単体で60万人、スパ単体で20万人、計80万人というものです。実際には、パーク単体で85万人、スパが15万人と思われますので、パークは大きく上振れ、スパは下振れしています。この理由を検証しておきます。
まず、沖縄旅行者のうち、ターゲット層を全体の40%、400万人と予想しています。ただし、昨年の入域観光客数は約1,100万人でしたから、全体の40%は440万人となります。また、ターゲット層に関するクロス集計が無いため、40%というのは「カン」でしかありません。この数字は検証不能です。
次に、メディア施策でリーチできるのが、そのうち70%としています。ジャングリアの認知度は、関東で68.5%という調査結果があります[6]。上記ターゲット層内の認知度は、より高くなると思われますので、実際は70%を上回っていると思われます。これは、開業時のメディア施策が想定以上にうまく行われたことと、その後、ネガティブな話題が大きく議論されたことの2点が理由だと考えます。これによって、集客が上振れる方向の効果が現れました。
最後に、ターゲット層内の認知者のうち80%が脱落し、残った20%が訪れる、と述べています。これは、イマーシブフォート東京の結果などを踏まえてはいますが、やはり「カン」の域を出ませんので検証不能です。ただし、実際にパーク入園者数が上振れしたことを考えると、より高い割合で訪れる人がいた、と思われます。これは、上記と同様に、良くも悪くもパークが大きな話題となったことが理由だろう、と考えられます。
このズレは、反省すべきではありますが、他方で開業前の需要予測の難しさも示しています。アンケートなどによる定量調査を組み合わせても、いわゆる「炎上」までを予想し、また、コントロールすることは困難です。炎上させないことで、需要予測の精度を高めることはできますが、現代ではやはり、SNS上での話題が集客を大きく左右します。口コミを再現性高く制御することは困難であるため、精度には限界があります。筆者による開業前の予想は、口コミや炎上の効果を除いた、採算性を見るための保守的な見積もりとしては、比較的妥当なものだったのではないか、と考えています。
なお、採算ラインが判明する前に、筆者も独自に採算ラインの試算を行っています。この試算では、採算ラインが100万人、きちんと配当を行う場合には120万人。2年目以降の入園者数の減衰を考慮すると、初年度150万人が採算ラインであるとしています。実際には、2年目以降の減衰を考慮せずに150万人が採算ラインであった、と考えられますので、筆者は採算ラインを過小評価しています。1つの理由は固定資産税等の税金を無視していることで、これは意図的なものです。というのは、これまでに大きな赤字を出してきた様々なパークで、固定資産税等を減免する様々な施策が打たれているためです。ジャングリアでも、赤字に陥った場合は固定資産税等の減免が発生すると考え、無視しています。ただし、初年度はそういった処置がありませんから、実際には採算ラインが高くなります。また、人件費を過小評価していることも、要因の1つだと思われます。パーク内には、予想より多くのスタッフがいました。ただし、パートや契約社員の人件費を1.5倍と見積もっても、採算ラインは10-20万人しか増加しません。これら以外に、何らかのコストを見落としていると思われます。見落としているのは、派遣会社や人材紹介業者への支払い分、社宅等のコストなど、人件費関係と、コンサル料等ではないかと考えられます。特に、ジャングリアは刀によってグランドデザインが行われたパークだと思われます。森岡氏らはUSJからライセンス収入を得るユニバーサル本社に強い憧れを抱いていて、ジャングリアを海外展開することで、ライセンスフィーを得たがっていたと思われる発言をしています。このことから、刀はジャングリアからライセンスフィーを受け取っていると予想されます。こうした資金を無視しているために、採算ラインを過小評価してしまった、と考えられます。
求人
第4回では、雇用の問題を考えました。ジャングリアから車で1時間圏内にいる生産年齢人口のうち、1%程度を探す必要がある点に触れ、給与水準の引き上げが必要になる一方で、給与水準を引き上げると地域における摩擦を生み出し、人手不足廃業などを発生させる可能性について議論しました。

周辺地域の時給や給与水準から、ジャングリアが十分な人材を集めるのに必要な、パートタイマー及び契約社員の給与水準は、時給換算で1,500円+寮の提供ではないか、と予想していました。開業前の水準は、契約社員が時給換算1,350円+寮、パートタイマーが1,100円でした。これに対して、開業から1年が経過した現在、契約社員は時給換算で1,440円+寮、パートタイマーは1,300円に上昇しています。現在募集されているほぼすべての職種について、契約社員とパートタイマーの2つ、あるいはそれらに加えて、短時間・日数限定型のパートタイマーの3つが募集されています。事実上、遠方からの応募は契約社員の形を取り、近隣かつ短期や短時間の応募はパートタイマーで雇用する形でしょう。
事前の予想と比較して、契約社員の給与はほぼ同等になっていますが、パートタイマーの給与は低くなっています。一般に、集客数の季節変動が大きいテーマパークでは、繁忙期の人員確保がカギとなります。このため、繁忙期のみ人員を確保するために、パートタイマーの給与を高める方向へと進みます。これに対して、ジャングリアはパークの形態が、常に多くの人員を必要とし、繁閑差による必要人員数の差が小さい形になっています。このため、予想に反して契約社員による従業員の充当が可能となり、繁忙期にパートタイマーを多数集める必要が無かったものと考えられます。このため、急激な時給の上昇はなく、人手不足による廃業等が報じられるような事態には至りませんでした。
このようなコスト構造は、集客数の低下に対して極めて脆弱であるため、今後は繁閑差に対応した人員体制へと変更していく必要があると考えられます。ジャングリアの繁忙期は、周辺の観光業においても繁忙期となるため、人員の獲得競争へと発展する恐れは依然として残っています。ただし、コストを抑制した構造に転換していけば、必要人員数も少なくなっていくため、結果として周辺との摩擦は生じなくなる可能性があります。
また、正社員の給与水準も、当初は一般300万円~、小さなグループのリーダー格で500万円~、グループリーダー格で約520万円~でしたが、現在は一般370万円~、小さなグループのリーダー格で500万円~、グループリーダー格で520万円~となっている。特に、一般の給与が大きく引き上げられているようだ。これは、契約社員等で雇用を賄おうとした枠を、一部正社員に振り分けた結果であって、枠を埋めるためではないかと考えられる。こちらも、契約社員等と同様に、大きく給与水準を上げていくフェーズには無いことから、地域との摩擦は生じにくい状態になったと考えられる。
パーク周辺の交通渋滞
第5回では、パーク周辺で交通渋滞が発生する可能性を考えました。周辺道路が元来渋滞しやすく、かつ、1,000台近い車が特定の時間帯に押し寄せるため、渋滞が発生する可能性が高いと結論付けています。これに対応するため、来場時間の分散策として、整理券制アトラクションを抽選制にする、あるいは、遅い時間帯の来場者を割り引くなどの施策が必要になる、としています。

加えて、沖縄タイムス紙に筆者による渋滞の試算結果が掲載されたこと[7]をうけて、その試算過程を公開しました。

これによれば、1時間に300台未満がジャングリア入口交差点を右折しようとした時点で、渋滞が発生し始める、としています。しかしながら、実際には目立った渋滞は発生しませんでした。渋滞が発生しなかった要因は、開業直後と現在で大きく異なっていますので、それぞれ分けて考えることにします。
まず、開業直後は、
- 1,000台ある場内駐車場のうち、7~8割程度しか販売されなかった
- 一部アトラクションが整理券制で、その整理券が開園直後に発行終了となることが広く知れ渡り、来場時間が早まる方向に分散された
- 美ら海水族館の開館時間が8:30であるのに対して、ジャングリアの開園時間が10:00に設定された
といった事情です。整理券制アトラクションの整理券配布数が予想以上に少なく、めぼしいアトラクションの整理券配布がアーリーパークイン(JTBの特定ツアーを利用した方対象)+α程度しか用意されていなかったため、開園の1時間以上前から訪れる方が多くいる状況になりました。また、情報が行き届かなかった方は、開園時間に合わせて来場するなど、情報格差によって来場時間が分散する結果となりました。情報格差によって体験格差を生じるのは好ましい状況ではありませんが、オペレーション上の配慮不足が結果として来場時間を分散させる結果になった、と思われます。
これらの結果、ジャングリアの入場台数は1時間あたり500台を大きく下回り、さらに、経路分散策もあって、ジャングリア入口交差点の右折台数は1時間あたり300台を下回ったと考えられます。
キャパシティの少ないアトラクションに整理券制を採用することは、来場時間を早める結果につながる、ということは事前に指摘していたにもかかわらず、これが早い方向の来場時間分散効果をもたらすことは見落としていました。これは、テーマパークの攻略法がSNS等を介して浸透する速さ、テーマパークというもの自体、「充足された」人が訪れる印象があり、特に沖縄のテーマパークという存在がこれに拍車をかけるため、批判が拡散しやすい存在であることを見落としていたためではないかと考えています。予想外の結果になったことは反省すべきであるとともに、テーマパーク事業の批判されやすさは、正しく認識しなければ非常に危険であることを示しています。
開業後しばらく経過してからについては、
- 午後入園チケットが発売され、入場時間分散が進んだこと
- 一部アトラクションが整理券制から抽選制に変更され、朝イチで入園することのメリットが薄まったこと
が理由で、渋滞が発生しなくなったと考えられます。午後入園チケットは、どちらかというと待ち時間対策として導入されたものですが、結果的に、これが渋滞対策としても効果を発揮している模様です。また、整理券制から抽選制への移行は、筆者は渋滞対策として導入すべきだと主張していましたが、これは、アーリーパークインが圧倒的に有利になってしまうことの不公平感や、同様に早朝に集中することへの対策として導入されたと考えられます。
アトラクション数が少ないパークにおいては、来場時間の分散が、待ち時間対策につながります。つまり、アトラクションが少ない結果として、待ち時間対策と渋滞対策が同じ手段によって可能だ、ということが、渋滞しにくい状況を生み出しました。ジャングリアは、来園者の不満に対して素早く手を打つだろう、ということを、第3回で述べています。したがって、その対策によって渋滞が起きにくくなることは予見可能でした。渋滞と集客の問題を分離して考えるのではなく、それぞれの対策が相互に影響を及ぼしあうことを想定すべきだった、という点は反省しなければなりません。
県内の観光施設への影響
第6回は、県内の他の観光施設への影響を考えました。ジャングリアは、
- 沖縄の滞在日数は休暇日数によって決まるもので、滞在を+1泊延ばすことはできない
- 1日1万人の入園を想定すると、待ち時間が極めて長くなるため、午後からの入園は現実的ではない
- 北部(ここでは本部半島以北を指し、恩納村は含まない)の宿泊施設のキャパシティが不足している
ことから、想定通り(年間150万人以上)の入園者がいると、県内の他の観光施設、特に中南部の観光移設の客数が減少するなどの影響を受ける、と指摘しました。

入場者数を公表していない施設も多いため、データの均一性の観点から、全て沖縄観光コンベンションビューローが公開しているおきなわ観光カルテ[8]のデータを用いて議論を進めます。まず、北部地域では、美ら海水族館のある海洋博公園・オーシャニックゾーンの来訪者数が、ジャングリアの開業以降、2025年12月と2026年5月を除き、前年同月比で減少しています。ただし、実際の入館者数のデータを見ますと、2025年8月と2026年6月を除いて、前年同月比で増加しています[9]。1年間の合計で、前年比約10万人減少していますが、美ら海水族館の実際の入館者数360万人に対して、このデータでは約200万人のため、正確性にはやや疑問のある結果です。
同じく1年間の合計で、今帰仁城跡は約10%の減少、お菓子御殿名護店は約6%の減少、古宇利島、ナゴパイナップルパーク、ネオパークオキナワはほぼ変化なし、といった結果です。
中南部に目を向けますと、東南植物楽園は周辺地域を含めて+7%、ビオスの丘は-16.5%、琉球村-5%、おきなわワールドが-0.5%という結果でした。当初リストアップしていたCAVE OKINAWAは、正確な人流データを取得できないため、除外しています。なお、おきなわワールドは、修学旅行シーズンの2025年10月に限れば、-14.5%という結果になっています。
美ら海水族館のように入館者数が多い場所でも誤差が大きいことから、やや信頼性にかけるデータではありますが、全体として減少または同等、という結果です。沖縄の入域観光客数が増加傾向にある中でのことですから、パイの奪い合いが発生しているとみて良いのではないか、と考えられます。
この構造は、東アジア圏の休暇日数に由来するものであって、短期的に変化するような性質のものではありませんから、ジャングリアが継続する限り、観光客の奪い合いは発生するものと思われます。ただし、開業2年目以降は、一般にテーマパークの集客は大きく低下します。これを踏まえますと、他施設への影響は、次第に無視できるレベルにまで低下していくものと思われます。
また、日あたり1万人といった入園者数にはなっていないことから、各アトラクションの待ち時間が短くなっていることもあって、短時間滞在型や午後入園のチケットも販売されています。こうしたチケットは、美ら海水族館などの他施設との周遊を可能にするものです。このタイプのチケットは、美ら海水族館のついで需要を狙ったナゴパイナップルパークやお菓子御殿名護店など、本部半島内の施設に影響を及ぼす可能性はありますが、中南部の施設への影響は緩和される可能性が高いです。
需要予測の精度
第7回では、これまでの実績を踏まえ、また、著書やインタビューなどから推測される調査手法の問題点を指摘しながら、需要予測の精度について、懐疑的な見方を示しました。

コンセプトテストは、テーマパーク、特にマスト要件の多い顧客を多く含む場合にはあてにならないこと、認知形成にあたって、露出は増えても認知につながらない可能性があることなどを指摘しました。このうち、コンセプトテストの問題については、現状の入園者数を踏まえれば、正しい指摘であったと考えています。一方で、認知については、単なるメディア露出だけで終わっていれば、現在のような認知は獲得できていない、ということは間違いありませんが、その後の炎上や、「ネットのおもちゃ」になったことで、認知が拡大していきました。やはり、この点についても炎上の可能性とその効果を過小評価していたため、獲得される認知を過小評価することにつながっていました。非常に難しいですが、SNS時代であることを踏まえ、炎上の規模を可能な限り予想しながら、上手に炎上と付き合っていくことが求められています。
結論
上記で述べた以外にも、第8回では「どうすべきだったのか」、番外編では700億円という投資が大きなものであることを述べているが、これらについては検証すべき記述がありません。
全体を通じて、予想が未熟であったことを反省すべき個所は多々ありますが、これらの多くに共通するのは、SNS時代の口コミ、炎上効果の大きさと、それらがどういった側面に波及するのか、という点に関する深い考察の不足です。筆者の考察不足により、不正確な予想になっていた部分につきましては、読者の皆様に深くお詫び申し上げます。
将来予測には、SNS社会であることの認識と、その影響をきちんと考慮に入れることが不可欠です。今後は、そうした効果をきちんと取り入れたうえで、予測を進めて参ります。
参考文献
[1] 株式会社刀「プロジェクト」2026年8月10日閲覧
https://katana-marketing.co.jp/project/
[2] 沖縄タイムス「7月開業のジャングリア沖縄 入場料6930円の狙いと収益性 その戦略とは?【インタビューでより詳しく】」 2026年8月10日閲覧
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1516362
[3] PRTimes「都会では味わえない、興奮と贅沢の旅。それがPower Vacance!!沖縄北部テーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」 夏休み 2025年7月25日(金)開業決定!」2026年8月10日閲覧
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000148025.html
[4] 関西大学「■ 関西大学宮本勝浩名誉教授×大阪府立大学王客員研究員が推定 ■「JUNGLIA(ジャングリア)」の開園後 15 年間の経済波及効果は、約 6 兆 8,080 億 100 万円、雇用創出は 88 万 1,531 人、粗付加価値創出は約 3 兆 8,143 億 7,300 万円」2026年8月10日閲覧
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2024/No60.pdf
[5] PRTimes「「沖縄のみなさんと、次のジャングリアへ。」ジャングリア沖縄、開業一周年セレモニーを開催」2026年8月10日閲覧
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000148025.html
[6] PRTimes「【2026年7月】「ジャングリア沖縄」首都圏の認知率は7割弱。開園1周年を迎えた認知度と利用意向を調査」2026年8月10日閲覧
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000187532.html
[7] 沖縄タイムス「【挑む ジャングリア開業】渋滞回避、実現遠く 入口交差点の車両数試算 琉球大学准教授「ルートや入園時間の分散が鍵」」2026年8月10日閲覧
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1557800
[8] 沖縄観光コンベンションビューロー「おきなわ観光カルテ」
https://areakarte.ocvb.or.jp/karte
[9] 内閣府沖縄総合事務局「国営沖縄記念公園 海洋博覧会地区」2026年8月10日閲覧
https://www.dc.ogb.go.jp/kouen/ocean/riyousha.html
引用方法
引用時は、下記を明記してください。
Yu Shioji, J. Amusement Park (2026) 260003.
利益相反
本稿に関わる利益相反はありません。


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