「ジャングリア沖縄」見落とされがちな失敗因子#7 需要調査

Author: Yu Shioji (塩地 優)
※当サイト内の論文・解説等は、すべて著者個人がデータ収集、解析、考察を行ったもので、いかなる文言も当会を代表するものではありません。
Article type:
Outreach(解説)
Article number: 250012

2025年7月、沖縄に新たなテーマパーク「ジャングリア沖縄」がオープンする。P&Gで培った、数学的なマーケティングのスキルを活用して、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを経営危機から救い、V字回復。万年赤字だったグリーンピア三木をネスタリゾート神戸に転換して黒字化、西武園ゆうえんちのリニューアルを行って集客増、お台場にイマーシブ・フォート東京を開業など、テーマパークに関わる様々な実績で知られる森岡毅氏が率いる株式会社刀。その刀が、長年温めていた沖縄テーマパーク事業を、ついに具現化する。実績を見ると、失敗の要素が無い事業のようにも思えるが、本当なのだろうか。落とし穴はないのか、地元の懸念なども踏まえてみていこう。

第6回は、周辺観光施設への影響を考えた。第7回の今回は、第1回で需要調査のズレが大きい可能性を指摘したことを踏まえ、なぜそのようなズレを生じているのかを考える。

この解説は、一般誌寄稿用原稿に、大幅に加筆修正したものです。文体が通常と異なること、正確性よりわかりやすさを重視していることをご了承ください。

UnsplashLukas Blazekが撮影した写真
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刀の需要予測

刀は、需要予測を1つのコア技術としている。特に、テーマパークの来場者数予測は、予測精度99%を達成したこともあるほど、高い精度を誇る[1]。これに関しては、オーバーフィッティングを指摘する向きもあるが、「99%のときもある」と書いてあるだけなので、単に誤差範囲内で、最も誤差が小さいものをピックアップしているだけだろう。常時99%の精度を出しているわけではない。この需要予測の技術は、USJで培われたものだ。USJは、2005年頃から綿密な顧客調査を実施していた[2]。こうしたデータをもとに、95%という高い精度で需要予測に成功している。

しかしながら、これらのエピソードは既存のテーマパークに関するものだ。新規テーマパークに関する実績は、多くは語られていない。彼らの過去の実績からは、その精度は決して高くないように見える[3]。なぜそのようなことが起きているのか、どのような需要予測をしているのか、その手法を彼らのコメントから考える。

なお、森岡氏の著書[4]では、需要予測には幅を持たせて狙いすぎるな、という趣旨のことが書かれている(刀のCIO,今西氏の執筆部分)。99%の精度は、当時は追い求めていなかったようだ。

ハリー・ポッターの需要予測法は使えない

今西氏は、USJのハリー・ポッターエリアの集客数を予想するという実例を[4]で述べている。彼は、まずは既存のテーマパークにおける新規投資で、映画のIPを利用したアトラクションについて、映画の観客動員数とアトラクション新設後のテーマパーク集客数の変化を比較した。その結果を線形に外挿し、USJにハリー・ポッターを新設した場合の、増加する入園者数を導き出した。

この手法は、他に参考となる類似事例がある場合に限定されている。ジャングリアの場合は、彼らが持っているデータとして、ネスタリゾート神戸のものを用いることはできるが、沖縄という立地が本質的に異なる状況を生む。単純に従来型施設のデータを援用することはできない。

刀の需要予測は、コンセプトテストが中心

では、新規施設の場合は、どのような手法で需要予測を行っているのだろうか。その答えは、[4]第6章9に書かれている。やっていることは比較的シンプルなコンセプトテストだ。ジャングリアについて、イメージがわかる写真や絵と、コンセプトの説明、価格帯、ここではおそらく立地も記載する。その施設に対して、行きたいと思うかどうかを問うアンケートを実施し、その結果を集計する方法だ。[4]第6章11には、BP-10という名前が付けられた、プレファレンスを測定しにいく手法が記載されているが、これがテーマパークではうまく機能しないことは、第6章5で述べられている。このため、採用されたのは一般的なコンセプトテストに近い手法だろう。コントロールと呼ばれる、参照データにどのような施設のテストを用いたかは定かでないが、ネスタリゾート神戸のような、類似していて、刀が正確なデータを保有している施設を用いたのではないだろうか。森岡氏は[1]で、まったく新しいパークなので参照データが無く、予想を外すことがある、と言っている。しかしながら、西武園ゆうえんちのようなリニューアルであれば、既存施設からの類推の積み上げが可能だし、イマーシブ・フォート東京も既存手法の組み合わせなので、適切な参照データを各アトラクションに対して用い、その積み上げに、組み合わせ効果の補正と価格の補正を加えれば良い。いずれのパークも既存手法の組み合わせで、まったく新しいことをやっているわけではないので、予想値は出る。こうした複雑なケースの予測精度こそ、調査担当者の腕の見せ所だ。

ここに、彼らが「距離抵抗」と呼ぶ、自宅から遠くなれば遠くなるほど、行きたいという意欲が減衰する現象を加味[5]し、また、イマーシブフォートの事例からわかった何らかの補正係数を、何らかの質問を追加することによって加味[6]していく。こうして需要予測を行っていると考えられる。なお、距離抵抗を考えることが非常に難しいことは、今西氏が著書で指摘している[4]。この点をどう解消したのかは定かではないが、ここでは、素直に「解消できたのだろう」と受け止めておく。

テーマパークは日用品ではない

この需要予測の方法を見て、違和感を抱かないだろうか。あなたはお出かけ先を選ぶとき、あるいは旅行先で、観光に行く場所を選ぶとき、どのようにして行き先を選ぶだろうか。

ヒントになるのは、旅行ガイドブックの構成だ。読者の行動を踏まえて洗練されてきた旅行ガイドブックは、旅行者の行動を代表している。ここでは[7]を参考に、旅行者の心理を考えてみよう。旅行ガイドブックは、地域別にインデックスされている。まずは、各地域の目玉施設から、行きたい地域を決めるのではないだろうか。その日の核となる行き先が決まったら、続いて余った時間を周辺施設に割り当てる。各施設の項目を見ると、以下のような記載がある。

  • 施設名
  • 電話番号
  • マップ上の位置
  • 施設概要
  • 住所
  • 交通手段
  • 営業時間・休業日
  • 駐車場台数
  • 料金・予算

施設概要やイメージ写真、料金などはコンセプトテストに近い情報だ。施設に興味を持つかどうかは、ここで決まるだろう。ついで重要なのが、「行き方」だ。これについても、刀は「距離抵抗」として勘案しているという。これを信じることにしよう。

滞在時間が1時間以内程度の観光地であれば、これで決まる。空いた時間に当てはめるか、あるいは時間に余裕ができた時のために、バッファーとして用意しておくか、いずれにせよ行き先のリストにはあがることになる。ここまでが、刀の想定するプロセスだろう。単体で設置されるアトラクション、例えば、ジップラインだけ、バンジージャンプだけ、といった施設であれば、これで問題ないと思われる。

しかしながら、テーマパークとなるとそうはいかない。価格が高く、また、貴重な旅行先での滞在時間のうちの多くを割くことになるため、旅行ガイドでも、より詳しく、一通りの主要アトラクションの紹介がなされる。「どんなことができるのか」を読者にイメージさせるためだ。これはコンセプトよりも、具体的にイメージさせる。読者側も、コンセプトテストにおいては金銭支出が発生しないため、「何となく行ってみたい」程度にぼんやりと回答するのに対して、行き先を決める段階では、時間と金銭を消費する以上、具体的にどのような体験で、どのように感情が動くのかをイメージする。この、具体性を持たせる段階で、コンセプトテストに対する大きな乖離を生じているのではないだろうか。

森岡氏は著書で、意訳すれば「深く考えさせることなく、マーケターが与えたイメージだけで購入を決断させろ」という意味合いのことを述べている[8]。これは、森岡氏の古巣であるP&Gのような、日用品の販売に対しては有効だろう。例えば、洗浄力の高い洗濯洗剤を買いたいと思った時に、何を比較するだろうか。比較のしようがないため、イメージや商品パッケージだけで購入するのではないか。これが、日用品というマーケットの特徴だ。しかしながら、テーマパークはイメージだけで行くものではない。森岡氏が携わったUSJを含む、大手テーマパークだけは別格で、イメージだけで集客ができるが、それ以外のテーマパークは、「何となく行ってみたい」と思わせることはできても、行動に移すための最後のひと押しには、具体的なイメージが必要になる。「きれいな写真が撮れる」「すごく怖いジェットコースターorお化け屋敷がある」などの、具体性を持った印象だ。そして、その魅力を組み合わせて、価格に見合った体験が演出できていなければならない。目標集客数が増えるほど、その「価格に見合った」のハードルは上がる。コンセプトが与えるイメージと、具体的にイメージされるものとの間にギャップがあるにもかかわらず、意図的にそのギャップを無視しているために、コンセプトテストと現実とを埋める補正が不十分なのではないだろうか。

ユーザーニーズをとりこぼさないことの重要性

支出額が大きくなり、具体的なイメージをもとに購入を決断するものについては、購入者がそれなりのこだわりを持っていることが多い。テーマパークであれば、具体的に乗りたいアトラクションがある、近くに温浴施設が欲しい、丸一日遊べる施設であってほしい、一日の予算がある値以下であってほしい、細かなところでは、特定の飲食メニューが欲しい、などだ。ジャングリアであれば、「パワーバカンス」というワードから、リゾート感も想像されるだろう。そうすると、景色を見ながらゆっくりできるチェアが欲しい、南国っぽいドリンクが欲しいなどといったニーズも想像される。

問題になるのは、こうしたニーズが「マスト」になっている時だ。マスト要件を持つ人が多いほど、コンセプトテストと現実の間には、大きなずれを生じる。コンセプトテストの段階では、情報が限られているため、マスト要件は「当然満たされるだろう」「条件が満たされれば行ってみたい」などという、暗黙の条件付きで回答されてしまう。実際のパークで、そうした要件が満たされない、あるいは満たされていることが開示情報からわからないと、コンセプトテストから大きく乖離する。

この乖離は、日用品でも発生し得る。例えば、柔軟剤の香りの種類であったり、コンディショナーに補修を求めるか潤いを求めるか、といった点だ。しかしながら、これは新規ニーズの掘り起こしでなければ、既存商品をベンチマークしたうえで、商品バリエーションを用意することで対応できる。テーマパークの場合は、そのマスト要件自体が見えにくい。パラメータが多く、ノウハウとして、各パークが独自に蓄積しているものだからだ。大手パークが当たり前のように対応している点への対応を怠ると、大きな取りこぼしが発生する。

需要調査はモデルのフィッティングでしかない

ここまで読まれた方の中には、「これは数学なのか」という疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれない。消費者や顧客の調査というのは、あくまで予想したい全体のうち、一部の方について統計的にデータを取得し、そのデータを全体にどう外挿するか、という議論でしかない。

森岡氏が有用性を強調する負の二項分布の式は、得られた統計データが全体を代表するものであるか、あるいは全体を代表するように補正をした場合に、購買確率が求まる、というものだ。負の二項分布を適用するのが正しいかどうか、というところにも議論はあるが、ここではそのまま受け入れることにしよう。さて、統計データが全体を代表するものでなければ、この式によって購買確率は求まらない。また、式の中には、多く選ばれるものほど選ばれやすい、ということを表すパラメータが入る。このパラメータを、どうフィッティングするかによって、結果は大きく変わってくる。つまり、「答え」が無い状態ではパラメータのフィッティングができないため、どこからかパラメータの値を持ってくる必要があり、それによって誤差が大きくなる。既存のパークにおいて、特定の日や月の来園者数を予測する場合には精度を上げやすいが、新規パークの場合には精度が出ない。

様々な前提があって、その上で行う関数のフィッティングに過ぎず、厳密解があるようなものではない。一般に想像される「数学」とは別物だ。間違った言葉ではないが、誤解を生じやすい。情報処理の一種だととらえておいた方が良いだろう。勘違いしないで頂きたいのは、「単なるフィッティング」ではあるが、使いどころを間違えなければ非常に有用だ、という点だ。手法に問題があるのではなく、手法の使い方や、その手法を表現する言葉に問題がある。

認知形成にも課題がある

ここまでは、負の二項分布を前提として、彼らがプレファレンスと呼ぶ、ブランドに対する好意度のようなものを測定する方法について、問題点を考えてきた。しかし、購買数はそれだけで決まらない。森岡氏らの著書でも指摘されているように[4]、認知と配架がかかってくる。配架については、沖縄の入域者数1,000万人、あるいは美ら海水族館の入館者数350万人というのが1つの基準になる。ここは、彼らの発言を見ていると、当面はいじる気が無いようだ。アクセス手段も、パーク到着時間に問題はあるが、過剰なほどに用意されている。

問題は、認知だ。刀の広報戦略は見事で、イマーシブ・フォート東京の開業時にも、非常に多くのテレビ、雑誌などのメディアが取り上げた。しかしながら、お出かけ系番組で紹介されるなどの、詳しい説明が少なかったこともあってか、イマーシブという概念の理解が広がらず、認知が思ったように伸びていないことは、著者が以前に指摘している[9]。

ジャングリアの開業にあたっても、刀は以前からの手法を踏襲している。USJのハリー・ポッターエリアのセレモニーに安倍首相が出席したように、ジャングリアの詳細記者発表には石破首相が出席した。これによって、メディアにジャングリアの重要性を印象付け、広く報じてもらうきっかけとする戦略だろう。しかし、テレビなどのメディアでの紹介は、イメージ戦略を得意とする刀にとっては残酷なものだ。具体的な映像とともに、「何ができるか」が紹介される。広報イメージをそのまま流すのではなく、体験映像が流れてしまう。その映像を見た視聴者は、具体的に何ができるのかをイメージしながら、記憶に残すかどうかを無意識のうちに判断するだろう。アトラクションに、他を圧倒するような強い魅力が無ければ、視聴者の記憶には残らない。

解のないことに取り組んでいる恐れ

沖縄の観光客に対して、コンセプトテストを繰り返した結果、「興奮」を求めているという結論を導いている[5]。これは、沖縄の入域者像とは少しずれる[10]。ズレがあるなかで、彼らは自らの調査結果に重きを置いた。しかしながら、このズレは、コンセプトテストの限界を示しているように見える。沖縄に観光に来た人が求めていることと、沖縄の観光客が”沖縄に”求めていることは違うし、やってみたいことを問えば、経験のないことに対して正のバイアスがかかる。アンケート対象が、全体を代表しているか、という問題もある。こうした問題は、専門家である彼らは認識しているはずだが、大きなマスを対象にした調査とのズレを無視した。

こうしたコンセプトテストに対する信頼度が、これまでの新規事業に対する予測のずれをもたらしているのだとすれば、今回のジャングリアでも、予測が当たる可能性は低いだろう。コンセプトテスト自体の設計を変更せずに、フィッティングパラメータを調整したり増やしたりしているだけだとすれば、それは解のないところに労力を費やしているだけだと考えられる。

森岡氏は、イマーシブ・フォート東京の事例で、事前予測とズレが発生したことを踏まえて、ジャングリアではその分の補正を行っていく、というニュアンスのことを述べている[1]。しかし、イマーシブ・フォート東京の開業は2023年3月だ。ジャングリアはとうに投資額も決まり、着工している。需要予測の補正を行うには、タイミングが遅すぎる。果たして投資額は適切だったのか、心配だ。

参考文献

[1] 日経ビジネス「誤差1%、驚異の需要予測 勝ち筋つくる数学マーケティング」2025年3月16日閲覧
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/01632/

[2] JMCA Web+「大復活&快進撃!ユニバーサルスタジオジャパンの成功要因とは 第3話 低迷期のUSJの集客施策」2025年3月16日閲覧
https://plus.jmca.jp/nagano_usj/3usj.html

[3] Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250005.

[4] 「確率思考の戦略論 USJでも実践された数学マーケティングの力」森岡毅、今西聖貴、株式会社KADOKAWA(2016)

[5] 沖縄タイムス「ジャングリア沖縄が不利な立地で成功するには 加藤代表が語る「五つのポイント」【インタビューで詳しく】」2025年3月16日閲覧
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1518747

[6] 日経クロストレンド「森岡毅氏の真意 イマーシブ・フォート東京、大胆改革の裏に「マーケの鉄則」」
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/01636/#loginBack

[7] 「るるぶ沖縄’25」JTBパブリッシング(2023)

[8] 「確率思考の戦略論 どうすれば売り上げは増えるのか」森岡毅、今西聖貴、株式会社KADOKAWA(2025)

[9] Yu Shioji, J. Amusement Park (2024) 240021.

[10] Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250007.

引用方法

引用時は、下記を明記してください。

Yu Shioji, J. Amusement Park (2025) 250012.

利益相反

本稿に関わる利益相反はありません。

コメント

  1. マーケター より:

    マーケ領域のコンサルタントです。

    刀社はよく高等数学を駆使する、というような言い方をしますが、我々コンサルティングやマーケ、ときどき金融の世界では、この手法は一種の心理的ハッキング・テクニックとして実際によく使われます。最近ではマスウォッシングなどと揶揄されることもあります。あえて数式をチラつかせることで、相手を圧倒し、説得力を持たせるためのテクニックです。また、数式ではありませんが皮肉っぽい言い方をすると、刀社のメンバー紹介文などは、非常にそのあたりを心得ているというか、相手を圧倒するための壮大な書き方がしてあります。

    ただ普通は、その高等数学は文系出身データ大好き営業本部長には通じても、社長には「で、どうなんだ、儲かるのかそうじゃないのか」などと言われてしまうのですが、代表の森岡氏がUSJに在籍したという事実と、メディアの圧倒的な好意的情報量によってその疑念が持たれにくいことが連鎖し、瞬く間に同社を時の企業にしてしまいました。

    数式は誰もが知っている通り、数値を入れて初めて現実に落とし込めます。数式や計算ロジック自体は完璧でも、そこに代入する予想客数や市場の成長率といったデータが、実はコンサルの「ただの勘(えいやっ!で決めた数字)」であることはよくあります。Garbage In, Garbage Outと言われたりします。

    コンサルとは不思議な仕事で、このえいやっ!を恣意的に入れることを求められる仕事でもあります。役員会の意思決定の場をうまく通したいので、このように数字を作れないかという相談も日常茶飯事です(多くのコンサルタントそれはうそをつくこととは違うことだと自分に言い聞かせながらやっています)。

    私の個人的な意見を述べれば、刀はちょっとこのえいやっ!がポジティブすぎる、結果から言うのは酷ですがカンがずれている。当然結果はついてこないのですが、それを刹那的に切り取ってうまくい行ったと発表するのもよくないと思いますね。

    刀社はP&G社からの移籍組が多いようですが、同社は消費財の分野であり、消費財ビジネスや既存大型施設の改善と、新規テーマパークや重投資型施設の事業運営とでは、求められる感覚がかなり異なります。今後もし同社が本当に強くなるなら、数理やブランド戦略の人材だけでなく、現場の需給感覚、設備産業としての勘所、地域商圏の限界を身体で分かっている人材を広く取り込むことが、むしろ彼ら自身を助けるはずです。

    • 塩地優 塩地優 より:

      マーケター様

      コメントをありがとうございます。本職の方からのコメント、大変参考になります。

      「数学を使う」というワードは、十数年前にサイエンスやエンジニアリングの分野でも流行しましたが、結局のところは具体的にどのような手法を使って、どのような成果を出すのか、という中身が伴わず、非常に限定された範囲の成果が得られたのみで、大きく広がることはなかったと認識しています。
      これも10年ほど前から、情報学的な手法を組み合わせた「ビッグデータ解析」というワードも流行しましたが、これもまた必要なデータ量の問題や、ご指摘の通りgarbage in, garbage outの問題があって、少なくともアカデミックなサイエンスの世界では、明確な進歩を生む状況には無い、という認識です。比較的均質かつ大量のデータが得られる、エンジニアリングの世界では、一定の有用性はありますが、これもまた従来の統計的手法に対する、OPEXも含めた明確な優位性が出ているかというと、議論の余地はあると考えています。

      特に、マーケティングでは正しいデータが得られないので、カンをもとにデータを取得、あるいは作成せざるを得ない、というのも理解ができます。
      コンサルは、ある種のサービス業的側面があると認識していますので、踏ん切りがつかない経営陣に対して、データで背中を押してあげるというのも理解できるのですが、刀の、特にジャングリアやイマーシブ・フォート東京など自ら運営する施設は、ある程度ロバスト性のある経営判断が求められますので、基本的にはややネガティブ側に振っておくべきものだと思います。これに対して、ポジティブすぎる数値を持ってくるのは、彼らはポジティブすぎる数値に対して、それがポジティブだという認識を持っていない、ということを意味していて、ここに彼らの問題があるように思います。勘所の分かった人材を取り込むためにも、まずは正しい現状認識が必要なのかもしれませんね。
      にもかかわらず、リスクヘッジのために出資額を低く抑え、経営責任を低減しつつ、黒赤関係なく上前をはねるようなスキームを構築しているので、予測に対する気迫のようなものも感じられません。

      彼らが時の人になった背景には、仰るように「詳細はノウハウなので、契約しないと開示できない」という説明に信頼性を持たせる情報が伴ってしまった、というところが大きいと感じます。また、テーマパーク関係の事業を見ていきますと、どちらかというと企業の内務が得意な方や、他企業に対して政治的影響力を持つ方に取り入り、その力を活用してきた、政治的な巧妙さが見て取れます。そのあたりの力学に対するカンが良くて、かつ経営以外の側面も見ている方に対するポイントの押さえ方がうまいんだろう、と思います。どちらかというと、社内政治をやった方がうまくいく、成功していける方なのかもしれませんね。

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